第48回 「口腔乾燥と保湿剤」

公開日:2026/04/22

口腔ケア 保湿剤の選び方

いよいよこのコラム連載も最終回です。これまで多方面から口腔ケアや食べることについて書いてきました。その中で、最後にもう一度だけ触れておきたいと思ったのが、口腔乾燥の問題です。お口の中が唾液で潤っていれば大きな問題は生じないのですが、乾燥することで様々な問題が生じます。そこで今回は、口腔乾燥の現状と対応についてお話します。

高齢者の3~5割が悩む口腔乾燥(ドライマウス)

さて、あなたのお口は潤っていますか?普段は意識しないかもしれませんが、多くの人はお口の中が自然に潤っています。ただ、高齢になると諸条件が重なり、お口が乾燥してきます。例えば、薬の(副)作用、水分をあまり取っていない、口呼吸、十分に咀嚼していない等々。調査では、高齢者の3〜5割が口腔乾燥を自覚しているとも言われ、食べる意欲や味わう力に影響する大きな要因になります。要介護状態になると、口腔ケアの困難さや服薬数の増加、脱水などが重なり、乾燥はさらに高率にみられることが知られています。口腔乾燥は「食べられない理由」の大きな割合を占めています。

唾液を呼び戻す「昆布だし」の保湿ケア 

このような口腔乾燥は以前から問題視されており、様々な対応が考えられてきました。水やお茶で口腔内を湿らせたり、ガーゼで湿らせたりする方法もありましたが、一時的な効果でした。また、ごま油をガーゼに含ませて保湿する方法も使われています。粘膜保護の代替手段として一定の効果はありますが、油分は誤嚥時のリスクがあり、長時間の保湿効果も限定的です。

その後、より安全で効果的な方法として、昆布だしを使用したケアが提唱されました。うま味刺激が唾液分泌を増やし、その効果は他の味より長く続くと報告されています。安価で導入しやすく、誰でもすぐに実践できることから、現場でも広く使われています。昆布だしを少量口に含んで味わうと、うま味の刺激で唾液腺がやさしく目覚め、口の中がふわっと潤ってきます。これは“自分の唾液を呼び戻すケア”であり、食前の準備運動のような役割を果たします。一方で、この潤いはあくまで一時的で、乾燥が強い方ではすぐに元に戻ってしまうこともあります。

口腔保湿剤のメリットと種類の選び方

そこで必要になるのが、唾液の代わりを補ってくれる口腔保湿剤です。粘膜をやさしく覆い、食前・食中・食後のどの場面でも乾燥を和らげてくれます。特に要介護の方や、唾液分泌そのものが低下している方にとっては、口腔保湿剤が大切な道具になります。

口腔保湿剤を使用すると、口の周囲組織が柔らかくなり、食べ物が動きやすくなり、会話もしやすくなります。また、意外かもしれませんが、入れ歯を入れているときの痛みがなくなることもあります。保湿剤の中には単なる潤いだけでなく、口臭や炎症予防、舌苔の除去、予防効果を兼ねる製品もあります。保湿剤にはジェルタイプとスプレータイプがあります。ジェルタイプは保湿の持続時間が長く、乾燥が強い方に向いています。スプレータイプは手軽で、外出先でもすぐに使用できます。

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逆効果にならない口腔保湿剤の正しい使い方

このようにメリットの大きい口腔保湿剤ですが、使用法を間違えると十分な効果が出ないばかりか、環境が悪くなってしまいます。私が現場で多く経験するのは使用料が多すぎることです。乾燥がひどいので多く塗布してあげようと思われるせいか、必要以上に使用されている例を多く見ます。実は多く塗りすぎることで保湿剤自体がダマになってしまったり、汚れの原因になったりする例もあります。1日に数回塗布するときも、しっかりと口腔ケアをしていったん保湿剤を除去してから適量塗るようにしましょう。また、1回の塗布量を多くするのではなく、こまめに使用するようにしましょう。適切に使用することで、口腔保湿剤はその人の「食べる力」を確かに支えてくれます。

プロフィール

五島朋幸(歯科医師/食支援研究家)
1965年広島県生まれ。 ふれあい歯科ごとう代表、新宿食支援研究会代表、日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科臨床准教授。株式会社WinWin代表取締役。
1997年より訪問歯科診療に取り組み、2003年以ふれあい歯科ごとうを開設。 「最期まで口で噛んで食べる」を目指し、クリニックを拠点に講演会や執筆、ラジオのパーソナリティも務める。

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