第16回 在宅介護で使う福祉用具⑤ 家具椅子など車椅子以外の椅子について

公開日:2026/05/26

在宅介護 家具いす

ベッド~車椅子~腰かけトイレ~入浴浴槽と書きつないできて、福祉用具に限らず生活用具全般に話題が広がっていますので、今回も生活環境を生活実態に大きな影響を与える「椅子」についてまとめておきます。

家具椅子の重要性について

まだ車椅子は必要ないという状態の方にとって、日ごろから使う椅子の良し悪しが生活実態に与える影響は大きなものがあります。使っている椅子が生活場面に相応しいタイプでサイズもあっていれば、例えば食事は摂りやすく食後はくつろいで過ごすことができます。

椅子に座ると食事を飛べにくい姿勢になってしまい、食後も座っていても楽ではない、となると、栄養状態も悪化し自室のベッドでの臥床時間が長くなるばかり、となります。まだ若い方で健常ならば、多少椅子が合っていなくても身体機能で補えるのですが高齢者さんではそういうわけにもいきません。

ですから、例えまだ歩ける方であっても高齢者さんには「自宅生活の中で使う椅子」に配慮してあげてほしいのです。ところが一般的に、私たち日本人は「椅子についてあまり詳しくない」んですね。

例えば皆さんは「家具椅子の種類」をいくつくらい上げることができるでしょうか?

ソファー/リビングチェア/ダイニングチェア/くらいは多くの方が上げることができるでしょう。カウチ/スツール/シェーズロングなどになると、知らない、という方も多くなってくると思います。椅子の種類・名前が沢山あるのは、それぞれの「使用目的」や「形」がそれぞれに異なる、ということです。高齢者さまにはどのような椅子が望ましいのでしょうか?

ダイニングチェア/リビングチェア/ソファーについて

ダイニングチェアは一言で言うと「食事を摂る時に座る椅子」です。キッチンダイニングテーブルと合わせて使う椅子ですね。

食事の時間というのは、精神的にはくつろいでいても身体は積極的に使って動かしている場面です。例えば食事中に、背中をダイニングチェアの背もたれにどっかり押し当てているわけではありません。背中は背もたれから浮き気味になることが自然です。ですからダイニングチェアの背もたれそのものがあまり高くなく、固めにできていることが普通です。

そういう椅子ですから健常者でも、休日の丸一日、ずっとダイニングチェアに座って過ごすのは、ちょっと辛いです。食事以外の時間にくつろいで過ごす椅子がリビングチェアやソファーです。リビングチェアはダイニングチェアよりも背もたれが高めにできていますし、ソファーの場合は座面や背もたれが柔らかくできていて座面が低めに仕上げてあり、リビングチェアよりもさらにゆったりとくつろげるようになっています。

ところが現在の一般家庭では、多くの家庭に「ダイニングチェア」はありますが、ダイニングチェアとは別にロビングチェアやソファーまである家庭は決して多くはないと思います。

例えば書斎や勉強部屋の中で机と合わせて使う椅子はダイニングチェアに近いタイプの椅子になりますが、同じ書斎や勉強部屋の中に机と合わせて使う椅子以外にリビングチェアも置いてあるということは珍しいのではないかと思います。

もしかしたらソファーは「客間」に置いてある家庭はあるでしょう。でも「客間」は「居間」ではありませんから、客間のソファーは家族が日頃から使う椅子とは言えないですね。

高齢者に合う椅子が無い!

ダイニングチェア/リビングチェア/ソファーの特徴について簡単な説明をしました。まず、多くの家庭にもある「ダイニングチェア」にも、高齢者さんの身体は合わなくなっていくものです。まだ歩ける状態であっても背中が丸まってくると、小さくて硬いダイニングチェアの背もたれと身体が合わなくなり、ダイニングチェアの上で座位姿勢が崩れてしまっている方が珍しくありません。

実はそういう方は、ソファーの方が座った姿勢は良くなることが多いです。ソファーの背もたれは柔らかく、座面に対して大き目な角度で後方に倒れ込んでいるものが多いので、丸まってきた背中を無理なく吸収しながら支えてくれるのですね。ところがソファーは座面が低めに作ってありますから、虚弱な高齢者さんが座ると今度は立てなくなってしまいます。つまり、ダイニングチェアもソファーも既製品のままでは高齢者さんにとって使いにくい椅子となってしまっています。

ダイニングチェやソファーが合わない場合はどうする?

ではどうするか?リビングチェアで背もたれが高くなっていると同時に、背もたれを座面に対して後方に倒し込めるように動かせるタイプの椅子があります。(背もたれリクライニング機能)

背中が丸まり気味の高齢者さんの場合、まず背もたれを大きく後方にリクライニング倒してしまった状態にして、お尻を座面奥まで入れながら座ってもらいます。その状態では背もたれは大きく後ろに倒れていますから背中には当たりません。そこからゆっくり背もたれを起こして、背もたれが背中に当たったところで(背もたれが丸まった背中を押し出してしまわないところで)形を決めてしまえばよいです。

リビングチェアのリクライニング機能を本人さまの身体へのフィッティングに使うことになり、合わないダイニングチェアやソファーよりもずっと良い状態になれます。ただ、高く長い背もたれがやや後方に倒れたままで使われることになりますから、大きくて邪魔、と感じられるかもしれません。でも可能ならば、食事用のテーブル前に一脚と居間にも一脚、つまり高齢者さんにとっての「ダイニングチェア」と「リビングチェア」をそれぞれ準備してあげる、そんな対応が理想です。

たたみ生活に馴染んでいて椅子なんて嫌!という方

いよいよ歩けなくなった方の場合は車椅子を使わざる得なくなるわけですが、未だ歩ける方の場合は、食事の時は椅子でもくつろぐ時は「和式のたたみ生活」の方が良い!という方もいらっしゃいます。そのお気持ちも理解できますね。

若い人の場合も例えば友人の家に遊びに行ったとき、最初は皆でソファーに座っていてもお酒を飲みだす頃には皆でソファー前の床にお尻を下ろしてしまってあぐら座りになって、なんてことが珍しくありません。やはりそれくらい、日本人には和式生活スタイルがしみ込んでいる、ということも事実です。

ところが床の上に直接お尻を下ろしたり、そこから立ち上がったり、というのは、なかなか大変な動作となります。だからといって、冬に家族が居間で炬燵に当たっている脇で、高齢者さんだけリビングチェアに、というのも寂しいですね。  

そんな時は福祉用具として、「電動昇降座椅子」というものがあります。座面が床の上に直接から普通の椅子の座面くらいの高さまで、ボタンを押せば電動で昇降する、というものです。座面を床まで下ろして家族と一緒に炬燵にあたり、炬燵から出る時には座面を上げて楽に立ち上がる、そんな風に使えます。この福祉用具は在宅生活を送る上で非常に便利であり有益である割に、意外と知られていない/使われていない、というイメージがあります。ぜひ多くの方に知っていただきたいと思います。

プロフィール

大渕哲也(理学療法士/介護支援専門員)
1962年新潟県生まれ。 急性期医療機関・慢性期医療機関、特別養護老人ホーム・福祉用具レンタル販売業者等で勤務。 現在は民間介護事業所にて、社内研修・現場アドバイスなどを行なっており、その他民間セミナー業者や各種団体、全国各地の現場からの要請に応じて、研修や現場指導なども行なっている。

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