第14回「口腔ケアの意義と効果」

公開日:2023/06/06

 口腔ケアが重要、口腔ケアはやらなければならない、と言うことを知っている方は多いでしょう。ただ、その効果を具体的に説明できる人は少ないかもしれません。そこで今回は、口腔ケアの3つの意義とそれによってもたらされる効果についてお話ししましょう。

1 口腔ケアの3つの意義

口腔ケアには3つの意義があります。1つは細菌を除去するということ。2つめはしっかりとお口の周り(中や外も)を刺激するということ。そして3つめは、口腔清拭や口腔消毒ではないのでケアの側面があるということです。これらを簡単に説明しましょう。

お口の中には300種類数千億個といわれる数の細菌が存在します。口の中で細菌は、浮遊してうがいでなくなるものもありますが、やっかいなものはバイオフィルムという形態で存在しています。バイオフィルムとは、細菌が凝集したもので付着性があり、水洗いでは落ちないという特徴を持っています。お口の中のバイオフィルムのことを「歯垢(プラーク)」といいます。聞いたことありますよね。水洗いでは落ちないという特徴があるのですからブラシでしっかりこすらなければなりません。口腔ケア基本のキは物理的にこすり、細菌を除去することです。

2つ目のお口の周囲の刺激。脳内酸性物質で咽頭や気管にサブスタンスPという物質が存在します。このサブスタンスPが少ないと、嚥下反射あるいは咳反射が正常に働かないことがわかっています。サブスタンスPは飲み込みに関与する物質なのです。ある実験で、口腔ケアでお口の周囲組織を刺激することでサブスタンスPが増加することがわかりました。つまり、口腔ケアをすることで飲み込みが良くなるのです。

3つ目はケアの側面です。口腔ケアはケアであって作業ではありません。口を無理やり開けて歯ブラシを突っ込んでゴシゴシやることはケアではありません。挨拶もあり、スキンシップもあり、不安を感じさせないようなコミュニケーションをとりながら行うことがケアです。これによって生きる意欲であったり希望であったり食欲がわいてきたりもするのです。

 

2 口腔ケアの効果

このような口腔ケアが身体のいくつもの効果を与えることがわかっています。それらの一端をご紹介します。

・虫歯や歯周病を防ぐ;皆さんが日頃励行されているブラッシングは口腔ケアです。むし歯や歯周病予防のために行っているということは十分お分かりですね。

・味覚の改善;しっかりと口腔ケアをして口腔内を清潔にすることで、唾液分泌も促され、味覚が改善します。

・口臭の改善;口臭の原因となる細菌を除去するため、口臭が改善します

・認知機能低下をおさえる;口腔ケアによって口から食べることが維持され、脳が刺激されるため認知機能の低下をおさえます。

・誤嚥性肺炎の予防;口腔ケアの実施によって誤嚥性肺炎予防効果が証明されています。

そのほかにも、低栄養の予防、心臓病や糖尿病の予防などが挙げられます。また、インフルエンザ予防効果や新型コロナウィルスの予防効果もうたわれるようになってきました。

 

では、口腔ケアになぜこのような効果があるのでしょうか。その理由は2つです。口腔機能によって口腔内環境が改善すること。もう1つは口腔機能が向上することです。

口腔ケアによって細菌が除去されると同時に唾液分泌が促されます。このようなことからむし歯や歯周病予防、さらにインフルエンザなどの予防効果が考えられます。また、口腔機能が向上することによって食事する機能が向上し、認知機能の低下や低栄養の予防などにつながります。

 

口腔ケアは「食べられる口づくり」とも言われています。しっかり口腔ケアをして安全に口から食べる。それによって人間にとって多くの益が持たされるのです。

歯科医師 五島朋幸

 

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