“最期まで口で噛んで食べる!”を目指して

公開日:2022/09/27 更新日:2022年9月1日

Introduction

ーはじめにー
 皆さんは訪問歯科の存在をご存じでしょうか。20年以上訪問歯科診療を実践してきたものとしては、「実践してくれる歯科医師が増えたなぁ」と思ってしまいますが、社会的にメジャーとは言い切れません。しかし、今後も続くわが国の高齢化、そして食べるために最も重要な口の環境を整える専門家として、訪問歯科は重要な1つのキーになるはずです。
 私が東京都新宿区で訪問歯科診療を始めたのは1997年。偶然知り合った訪問の内科医に「在宅医療の現場に歯医者さんがいないんです」と言われ、興味本位でその医師の訪問見学をしました。そこで拝見した皆さんは、全員入れ歯を外され、食べられるものだけ食べる、食べられなかったらミキサーにして飲む、ダメだったら点滴、ダメだったら鼻からチューブ、ダメだったら死ぬ…という世界でした。歯科医師としてはとても悔しい現実を目にして「私が外された入れ歯を入れに行きます!」と宣言して訪問歯科を始めるようになりました。
 約25年の訪問歯科の経験から、在宅ケアの現場には、本当に多くの食の問題があることを痛感してきました。噛めない人、飲み込めない人、食欲のない方、食べることを拒否する方…。長年の経験があるからと言ってすべてを解決できるわけではありません。だからこそ、介護者の方たちの苦悩はよくわかります。
私たちは毎日、当たり前のように食事をしているのでそこに問題が起きてしまうことに驚いてしまいます。では食べられなくなった時はどうするのか?実は、答えは1つではありません。
 例えば、噛むことが難しくなった方。入れ歯を修理するだけで食べられる人もいるかもしれませんが、それだけでは解決できない方もいます。そんな時には噛むためのトレーニングが必要な人もいます。飲み込めない方にもいろんな状態があって、その方にあった対応が必要になります。
 今回の連載の目的はまさにマッチングです。自分の目の前に起きている問題は何なのか、それに対する支援は何かをイメージでき、誰が(どういった職種が)支援者なのかを理解できるようにしていきたいと思っています。