第11回「入れ歯の話①」

公開日:2023/03/27

 歯医者にとってはなじみ深い入れ歯ですが、よく考えれば、皆さんが入れ歯について学ぶ機会なんてありませんよね。でも、少し入れ歯の知識を持つことによって入れ歯の取り扱いやケアが変わるかもしれません。そこで今回は歯を失ったときの対処法と入れ歯の基本的なお話をしていこうと思います。

1 歯を失ったとき

何らかの要因で歯を失った時、そこを補うものとしては現在3種類あります。1つはブリッジ、2つ目はインプラント、そして3つ目が入れ歯です。皆さん聞いたことはありますか?それぞれについて少しふれておきます。

ブリッジというのは、歯を抜いた後、残った前後の歯を削って連結した冠を入れて固定したものです。インプラントはご存知な方も多いかと思いますが、歯を抜いた後、チタン等の人工物を骨に埋め込み、固定した段階でその上に人口の歯を装着するものです。入れ歯の特徴はただ1つ。出し入れ式だということです。

これら3つにはそれぞれ異なる特徴があります。まず適用です。インプラントや入れ歯は、1本だけ歯が抜けた方から、全部の歯が抜けた方まで対応できますが、ブリッジは土台となる歯が必要なので、抜けた本数、抜けている場所によっては作れないケースがあります。もちろん全部の歯がない人にはブリッジはできません。次に体への負担です。入れ歯は残っている歯を大きく変えることなく作製が可能ですが(より良くするために削ったり、詰めるケースもあり)、ブリッジでは土台になる歯を削らなくてはならず、インプラントでは土台を埋め込む手術が必要です。ですから、歯を削りたくないという方や、埋め込みの手術は嫌だ!という方には入れ歯をおすすめします。入れた時の感覚で言うと、インプラントやブリッジは馴染んでしまえば自然に感じますが、入れ歯だと大なり小なり異物感があります。ただし、この異物感も個人差が大きく、同じ大きさのものを入れても人によっては気にならない方もいますし、大きな負担になる方もいます。

このように、それぞれの特徴があり、ご本人の状況、希望、コストなどを聞きながら作る物を選択していきます。もし、皆さんがこのような選択を迫られ、迷うようだったら侵襲の少ない物からチャレンジしていった方がいいです。つまり入れ歯を選択し、入れ歯の異物感や審美性に問題があったらブリッジやインプラントに変えていくという風に。

 

2 入れ歯の種類

さて、入れ歯の話です。歯が1本もない状態で作るものが総入れ歯、逆に1本でも残っている状態で作るのが部分入れ歯です。入れ歯は上の顎、下の顎の単位ですから、上下とも1本も歯がなければ上下総入れ歯、上は1本もないけど、下に何本か残っていれば上は総入れ歯、下は部分入れ歯となります。

総入れ歯は粘膜との吸着でついていることが基本です。要は吸盤のような原理です。一方、部分入れ歯は吸着も必要なのですが、残っている歯に針金のようなもの(クラスプ)で固定することがあります。

また、保険の入れ歯、自費の入れ歯という話を聞いたことがあるかもしれません。これは使用する材質が異なり、保険で作る入れ歯では使用できないような金属などが使用できます。ですから、自費の入れ歯だから噛める入れ歯になるか?と言うと…歯医者の腕次第です。ちなみに歯科の自費診療の価格は各医院の設定なので、どれくらいの値段ということは言えません。

 

3 着脱のポイント

総入れ歯であっても外しにくい(適合の良い入れ歯)時があります。特に上の入れ歯で密着していると、下よりも表面積が大きい分はずれにくい場合があります。このような時、前歯をつまんで下に引き下げてもなかなか外れません。前歯をつまんで、入れ歯の後ろの端に空気を入れるように少し回転させます。空気が少しでも入ればすぐに外れます。部分入れ歯では、針金を直接つまんで外すようにします。

逆に、総入れ歯のように大きな入れ歯が入れにくいときがあります。実は単純なことがあります。入れ歯を入れるとき、本人に大きな口を開けてもらうと入りにくくなります。入れ歯の幅は、唇よりも広いので、唇を横に開かなければ入りません。大きな口を開けると縦には広がりますが、横に広がりにくくなります。したがって、軽く開けてもらい、唇を横に広げて入れるようにします。

 

入れ歯の話は奥も深く、まだまだ知っておくといい知識もあります。それはまた別の機会に。次回は唾液の話をしていきます。

歯科医師 五島朋幸

 

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