第10回「舌の役割」

公開日:2023/03/13

 皆さんは舌と聞いてどんな役割を思い浮かべますか?まずは味を感じることではないでしょうか。恥ずかしながら私自身も、口から食べる動きを学ぶ前まではそう思っていました。また、学生時代、英語の授業で「L」と「R」の発音とかで舌の位置や動きを解説されたりしていたので発音にも関与することは感じていました。
 さあ皆さん、舌がないと噛めない!といったらどう思いますか?実はものを噛むという動きの中で主役は舌なのです。今回は舌の役割について考えていきましょう。

1 舌の4つの働き

最初に結論を言ってしまいましょう。舌には4つの働きがあります。味覚、咀嚼、発音、歯列形成。以下、簡単に解説しますが、それぞれ人間にとっては欠かせない機能です。逆に、舌が機能しないとこれらが乱れてくるということです。私たちも日々の臨床の中で舌の変化を確認します。舌が汚れている人は味覚が衰え食欲が減り、噛むことも難しくなり、会話もしなくなります。ですから舌はその方の体調のバロメーターなのです。

 

2 味覚と食べ物の感覚

味を感じる器官は舌だけではありませんが、味を感じる「味蕾(みらい)」が最も多く存在します。この味蕾で甘味・苦味・塩味・酸味を感じます。ちなみにこの味蕾は、乳幼児で約1万個、成人になるにつれて約7500個まで減少すると言われています。

舌は味だけではありません。熱い、冷たい、大きい、小さい、硬い、柔らかいなどどのような食べ物なのかを感じることができます。ここでどのような形態の食べ物かを感じることで噛み方の動きが決まってきます。

 

3 咀嚼

さて、重要なのはここからです。舌の動きと食べることです。理科室にあった骸骨の模型を思い浮かべてください。その頭の部分に上下の歯があります。その奥歯におせんべいを入れて噛ませると、おせんべいは内側と外側に落ちてしまいます。つまり、バリっと2つには割れても2回目噛むことはできません。私たちがバリバリ、モグモグと食べられるのは頬や舌があるからです。そしてもう少し想像してみてください。舌は下顎側についていますので、ものを食べているときは上下運動をしながら、さらに左右にずらしながら巧みに動いているのです。

食べ物を口に入れるとき、まず前歯で噛み切り、舌で受け取ります。その後すぐに食べ物を奥歯の上に運びます。嚙み始めると、食べ物が落ちていかないように支えます。そして飲み込める形になると舌先が上顎の天井に接するようにして喉に送り込みます。

 

4 発音

舌は発音にも大きくかかわります。唇が関わる音もありますが、例えば、カ行タ行やラ行を発音してみてください。舌が動いている感じがわかりますか?カ行では舌の奥、タ行では舌の前方、ラ行では舌の先端を動かして発音しています。嚥下体操として「パタカラ」と発音する訓練があります。パは口唇ですが、「タカラ」は舌のトレーニングなのです。

 

5 歯並び

舌と歯並びの関係は少し以外でしょうか。人間の歯並び、自然にその位置に出てくるような気もしますが、そうではありません。歯の並びの外側は頬や唇、内側は舌があります。この内外の圧力によって歯並びは変わるのです。例えば、唇の力が弱く、舌の力が通常ないしは強ければ出っ歯になってしまいます。逆に、舌の力が弱ければ内側に傾いてしまいます。また、子供たちなどで出っ歯になった子に唇を鍛えるトレーニングをすると戻っていくということも起きます。このように、舌は歯並びにも関与しているのです。

舌の動きは、皆さんが想像している以上に複雑で巧みです。この動きがあるからこそおいしく食事が食べられるのです。しっかり噛んで食べられているときにトレーニングは必要ありませんが、いざ、動きが悪くなってくると舌のトレーニングが必要になってきます。

 

次回は、歯を失ったときにもしっかり噛むために必要な入れ歯の話をしていきましょう。

歯科医師 五島朋幸

 

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