排泄介助(トイレ介助)の手順と注意点とポイントについて

公開日:2023/12/21

排泄介助

排泄介助は在宅介護において、大切なサポートのひとつです。
排泄介助の手順や注意点、排泄介助のポイント、役立つ介護用品の選び方についてご紹介いたします。

排泄介助とは

 

排泄介助とは、麻痺や筋力低下などのため身体が思うように動かせず、自力で排泄行為を行うことが難しい要介護者の排泄行為をサポートすることです。

排泄は、人間にとって 生きるために必要不可欠な生理現象です。
しかし、排泄行為について他者にサポートを求めなければならない状況に、恥ずかしさ や情けなさなどを強く感じる要介護者が多くいらっしゃいます。

排泄介助を行う際には、十分に要介護者のプライバシーや尊厳を守るよう配慮する必要があります。

 

排泄介助の種類

排泄介助には、 以下のような種類があります。

 

トイレ介助

「トイレ介助」とは、要介護者と共にトイレへ移動して排泄介助を行うことです。
歩いて移動する場合と車椅子などで移動する場合があります。
要介護者の状態により、全て介助が必要な場合と一部のみ介助する場合に分けられます。

 

ポータブルトイレ介助

「ポータブルトイレ介助」とは、ベッドの横に置いたポータブルトイレで排泄する要介護者への排泄介助です。
トイレまで移動するのが難しい場合に行われる方法です。

 

ベッド上の差込便器 ・尿器の介助

差込便器・尿器の介助は、立ち上がる動作や座る姿勢を保つことができず、トイレやポータブルトイレでの排泄が難しい要介護者に対して、ベッド上で差込便器や尿器を使って排泄介助を行うことです。

 

おむつ交換

便意や尿意を感じたり、排泄を要介護者の意思でコントロールしたりすることが難しい場合には、おむつを使います。
数時間ごとにおむつの中を確認して、排泄されていたらおむつを交換し、陰部の清潔を保つ必要があります。

 

在宅介護で排泄介助を行う際の注意点・ポイント

 

在宅介護で排泄介助を行う際の注意点・ポイントについて、ご紹介します。

 

排泄しやすい環境づくり

要介護者が排泄介助の際に感じる恥ずかしさや抵抗感を少しでも軽くするために、排泄しやすい環境づくりをすることが大切です。
排泄中はなるべく1人になれるように配慮します。

音やにおいが気にならないようにテレビや音楽をかけたり換気をしたり、1人で落ち着いて排泄できるように排泄中は介助者が席を外したりといった配慮が必要です。

 

羞恥心への配慮

自力で排泄ができていた頃は、排泄している場面を人に見られることはほとんどありません。
しかし、においや音も気になるため、排泄介助をしてもらうことを恥ずかしいと感じる要介護者はとても多いです。

「恥ずかしい」「情けない」などの感情から、水分や食事を摂ることを拒んでしまう場合もあるため、排泄介助をする際には、要介護者の羞恥心へ配慮することが大切です。

 

ベッド上で排泄しやすくする工夫

人はトイレで排泄を行う習慣が染み付いています。
突然、ベッド上で排泄しなければならなくなった場合、うまく排泄できない要介護者はとても多いです。

排便時にはベッドの頭側を30°上げて、お腹に力を入れやすくします。
急かされるとなかなか出ない場合もありますので、ゆったりとした気持ちで排泄できるように介助者から声をかけるといった配慮も大切です。

 

拭き方のポイント

排泄介助でも、トイレで排泄を行うのと同様に、陰部を拭きます。
拭き方のポイントは以下の通りです。

● 尿道口から肛門に向かって拭く
● 粘膜部分は特にやさしく拭く
● 排便時は便をトイレットペーパーなどで大まかに拭き取ってからおしりふきで拭くと素早く拭き取れる
● 便がとれにくい場合はゴシゴシ皮膚を擦らず陰部洗浄(洗浄料などを使い、陰部の汚れを洗い流すこと)をしたほうが皮膚を痛めにくい

 

肛門付近にいる大腸菌が尿道に入ると、膀胱炎などの尿路感染症を引き起こす原因となるため、拭く方向は必ず守らなければなりません。

 

陰部洗浄を行う際のポイント

陰部洗浄を行う際のポイントは以下の通りです。

● 陰部洗浄で使うお湯は「ぬるま湯」にする
● 皮膚にやさしく汚れを落としやすくする「おしり洗い」を使うと皮膚を擦らずに簡単に汚れを落とすことができる
● 防水シーツを敷いたり、おむつ上で行うことにより、シーツや衣服を濡らさないようにする
● 少しずつお湯をかけることができる陰部洗浄用のボトルを使うとよい

 

尿路感染を予防するために、1日1回 以上陰部洗浄を行う必要があります。
特に排便時に陰部洗浄を行うと、爽快感を得ることができます。

 

在宅介護で排泄介助に役立つ介護用品の選び方

 

在宅介護で排泄介助を行う際に役立つ介護用品の選び方をご紹介します。

 

おしりふきの選び方

おしりふきにもさまざまな種類があります。
ノンアルコールで保湿成分など、皮膚にやさしい成分が配合されたおしりふきを選ぶと、皮膚トラブル の予防に効果的です。

 

トイレ介助をする場合には、トイレに流せるタイプのおしりふきが便利です。
寝たきりの要介護者が排便をした場合に使うとしたら、大判でやぶれにくいタイプのおしりふきが適しています。

排泄回数が多く、おしりふきの使用頻度が高い場合は、トイレットペーパーに吹きかけることで 、おしりふきとして使うことのできるスプレーも便利です。

 

おしり洗いの選び方

おしり洗いは、洗い流して使う液体タイプと、泡を広げて汚れを浮き上がらせ、洗い流したり拭き取ったりできる泡タイプがあります。

排便時に陰部洗浄を行ったほうがよいとはいえ、排便の回数が多い場合は介助者の負担が大きくなってしまいます。
そんなとき、洗い流さなくてもよい泡タイプのおしり洗いがとても便利です。

泡タイプのおしり洗いは、お湯を使って洗い流してもよいですし、泡を広げてから拭き取るだけでも使うことができます。
尿や便のにおいを包み込み良い香りに感じられる、においにも配慮したおしり洗いを選ぶと、効果的に消臭できます。

 

 

おむつの選び方

おむつには、さまざまなタイプがあります。


パンツ式のおむつは、トイレやポータブルトイレを使う要介護者に適しています。
トイレ介助の際に、下着と同じように扱うことができるためです。

テープ式のおむつは、寝たきりの要介護者に適しています。
寝たきりで腰を上げられない要介護者の場合は、テープ式のおむつだと腰を上げなくても陰部洗浄やおむつ交換をしやすいためです。

 

排泄介助に役立つ介護用品

排泄介助に役立つ介護用品として、代表的なものは以下の通りです。

● 防水シーツ
● ポータブルトイレ用消臭剤
● 介護用消臭剤
● おしり洗い
● 使い捨ての手袋
● 尿や便を撥水バリアではじくクリーム

介護用消臭剤は、尿や便のにおいを消臭するために必要な成分が含まれています。
一般の消臭剤ではなく、介護用消臭剤を使うと効果的です。

尿や便が漏れてしまった場合に、寝具を汚さないためにも防水シーツを日頃から使っておくと介助者の負担を軽くできます。

尿や便をはじくクリームは、お肌を守るために役立ちます。

 

車椅子の方へのトイレ介助

 

車椅子を利用している要介護者へのトイレ介助の手順について紹介します。

 

部分介助の場合

要介護者が立ったり座ったりする動作ができる場合には、一部分をサポートする部分介助でトイレ介助を行います。

 

  1. 車椅子をトイレの出入口、または便座に近づける。トイレ内の横幅が狭い場合には、便座に向き合うような位置に車椅子を停める。トイレ内が広い場合には、便座に対して直角になる位置に車椅子を停める
  2. 車椅子のフットサポートを下ろし、足を床につけてもらう
  3. 要介護者に声をかけ、車椅子に浅く座りなおしてもらう。介助者は要介護者のベルトを緩めたり、ファスナーを外したりする
  4. 要介護者に手すりの場所を伝え、要介護者に立ち上がってもらう。立ち上がったら便座に背を向けるように身体の向きを変えてもらう
  5. 要介護者が立っている姿勢のときに、介助者が要介護者のズボンや下着を下ろす
  6. 要介護者に声をかけ便座に座ってもらい、姿勢が安定したら、介助者はトイレから出る
  7. 排泄が終わったら、おしりの汚れた部位をおしりふきで拭き取る。要介護者自身で拭き取りが難しい場合は、要介護者に前傾姿勢になってもらい、介助者が拭き取る
  8. 要介護者のズボンや下着をあげる
  9. 車椅子から便座に座ったときと逆の手順で、便座から車椅子に移乗してもらう

 

要介護者ができることはなるべく自力でやってもらいます。

 

全介助の場合

座る姿勢は保てるけれど、要介護者自身で車椅子から便座への移動が難しい場合は、全介助で排泄介助を行います。
1〜3までは一部介助と同じ手順です。
全介助の場合は、車椅子と便座の移動と便座に座る際の手順が異なります。

 

  1. 要介護者に声をかけ、介助者が要介護者の両脇に腕を入れ、介助者の肩につかまってもらうか、首に腕を回してもらう。要介護者の身体を支えた状態で介助者が立ち上がり、要介護者を立った姿勢にする
  2. 1.の姿勢のまま、介助者が身体を回転させて要介護者の身体を便座のある方向に移動させる
  3. 要介護者が介助者につかまって立っている姿勢のときに、介助者が要介護者のズボンや下着を下ろす
  4. 介助者がゆっくりと膝を曲げて要介護者を便座に座らせる
  5. 便座に座り、要介護者の姿勢が安定したのを確認したら、介助者はトイレから出る
  6. 排泄が終わったと要介護者から声かけがあったら、トイレに入り、要介護者に声をかけて前傾姿勢になってもらう。介助者がおしりふきを使って排泄後の陰部やおしりについた汚れを拭き取る
  7. 要介護者の両脇に腕を入れ、介助者の首や肩に手を回してもらう。介助者が立ち上がり、要介護者に立った姿勢になってもらう。立ち上がることができたら、介助者が要介護者のズボンや下着をあげる
  8. 車椅子から便座に座ったときと逆の手順で、便座から車椅子に移乗してもらう

 

全介助で行う場合も、要介護者に声をかけ、立ち上がりなどの際には要介護者にも足腰に力を入れてもらうようにします。

 

トイレまで歩くことができる方へのトイレ介助

 

トイレまで歩くことができる方へのトイレ介助の必要物品、手順、注意点について、ご紹介します。

 

トイ レ介助の必要物品

トイレ介助の必要物品は以下の通りです。

● おしりふき
● 使い捨ての手袋
● おむつや尿とりパッド(必要な場合)

トイレで陰部洗浄を行う場合
● おしり洗い
● 陰部洗浄用のボトル(お湯が入ったもの)

便が出た場合には、なるべく陰部洗浄を行うようにすると、おしりの皮膚を清潔に保つことができ、皮膚トラブルを予防できます。

 

トイレ介助の手順

トイレまで歩くことができる方へのトイレ介助の手順は、以下の通りです。

 

  1. トイレまで歩いて移動する。ふらつきがある場合は、介助者が横に立ち、要介護者の身体を支えるか、介助者の腕につかまってもらう
  2. トイレに入ったら便座まで付き添って歩き、手すりの位置などを確認する。手伝いが必要なら声をかけるよう要介護者に伝え、介助者はトイレから出る
  3. 排泄が終わったと要介護者から声かけがあったら、トイレに入る。陰部洗浄を行う場合はこのタイミングで行い、トイレットペーパーで水分を拭き取る
  4. トイレに移動したときと同様に要介護者に付き添って自室に戻る

 

ふらつきがある場合は、適宜サポートします。

 

トイレ介助の注意点

トイレまで歩くことができる要介護者の場合には、なるべく自力でできることはやってもらいます。

ただし、繰り返し衣服を汚してしまうなどうまくいかない場合は、ズボンや下着の上げ下ろしや拭き取りなどを介助者がお手伝いする旨を説明し、トイレ介助を行うようにします。

 

ポータブルトイレでのトイレ介助

 

ポータブルトイレでのトイレ介助について、ご紹介します。

トイレ介助の必要物品

ポータブルトイレでのトイレ介助の必要物品は以下の通りです。
● ポータブルトイレ
● おしりふき
● 使い捨ての手袋
● トイレットペーパー、もしくはおしりふき
● おむつや尿とりパッド(必要な場合)

 

ポータブルトイレ で陰部洗浄を行う場合
● おしり洗い
● 陰部洗浄用のボトル(お湯が入ったもの)
● トイレットペーパー

基本的には、トイレまで歩くことができる方へのトイレ介助のときと同じです。

 

ポータブルトイレの選び方

ポータブルトイレを選ぶ際には、要介護者の体格や身体の大きさに合ったものを選ぶ必要があります。
ポータブルトイレの高さや便座の大きさが合っていないと、座ったときの姿勢が不安定になってしまい危険です。

 

在宅介護では、木製やプラスチック製のポータブルトイレがよく使われています。

木製は家具調とも呼ばれ、インテリアに馴染みやすく、適度な重さがあり安定感があります。

プラスチック製は軽くて持ち運びしやすいため、お手入れもしやすい点がメリットです。

ただし、座った姿勢を保つのが難しい要介護者の場合には、軽いプラスチック製のポータブルトイレでは不安定になりやすいため、ある程度の重さがある木製タイプ のポータブルトイレを選ぶ必要があります。

排泄に時間がかかる要介護者や、痩せている要介護者の場合は、便座が柔らかいタイプを選ぶと排泄時のストレスが減ります。

 

ポータブルトイレ 介助の手順

ポータブルトイレでのトイレ介助の手順は、以下の通りです。
一部介助が必要な要介護者のトイレ介助についてご紹介します。

 

  1. ベッド上で身体を起こし、ポータブルトイレが置いてある側のベッドの端に座ってもらう。自力で起き上がれない場合は介助者がサポートする
  2. 要介護者の足を床につけ、要介護者の両脇に介助者の腕を入れる。介助者の首に要介護者の腕を回してもらい、介助者が要介護者を立ち上がらせる
  3. 要介護者が便座に背を向ける体勢になるように介助者の身体の向きを変えてから、要介護者のズボンと下着を下ろす
  4. ゆっくりと介助者が膝を曲げて身体の位置を低くしていき、要介護者をポータブルトイレの便座に座らせる
  5. 排泄が終わったら声をかけるよう要介護者に伝え、その場を離れる
  6. 排泄が終わったと声かけがあったら、介助者が汚れた部位をおしりふきで拭く。必要があれば陰部洗浄を行い、トイレットペーパーで水分を拭き取る
  7. 便座に移ったときの逆の手順でベッドに戻る
  8. ポータブルトイレのバケツを取り出し、排泄物を処理してポータブルトイレに戻す

ポータブルトイレで排泄したら、毎回速やかに排泄物を片付けます。

 

ポータブルトイレ 介助の注意点

ポータブルトイレ介助を行う際には、とても恥ずかしいと感じる要介護者が多いため、プライバシーへの配慮が必要です。
排泄中、介助者は席を外し、要介護者の精神的負担を減らします。

 

ポータブルトイレを使う場合は部屋の中で排泄するため、においや音への配慮も重要です。
排泄中はテレビをつけたり、音楽を流したりして排泄時の音が聞こえないようにします。
排泄後には速やかに排泄物を片付け、ポータブルトイレを清潔に保ち、窓やドアを開けて換気をしましょう。
適宜、ポータブルトイレ用の消臭剤を使います。

 

ベッド上で差込便器を使う排泄介助

 

ベッド上で差込便器を使った排泄介助の必要物品、手順、注意点をご紹介します。

 

排泄介助の必要物品

ベッド上で差込便器を使った排泄介助の必要物品は以下の通りです。
● 差込便器
● おしりふき
● トイレットペーパー
● 使い捨ての手袋
● おむつや尿とりパッド(必要な場合)

 

陰部洗浄も行う場合は以下の物品も準備します。
● 陰部洗浄用のボトル(お湯が入ったもの)
● おしり洗い
● トイレットペーパー
● 保湿剤

 

頻繁に排便がある場合や、おしりの皮膚トラブルがある場合には、可能な限り排便をするたびに陰部洗浄を行います。
陰部洗浄後に保湿剤を使うと、皮膚トラブルの予防に効果的です。

 

差込便器の選び方

 

在宅介護で使われる差込便器はプラスチック製 のものが主流です。
プラスチック製の差込便器は軽量で大きすぎず、洗浄も手軽にできて扱いやすいため、広く販売されています。

 

肌に触れる部分を覆う布製のカバーがついているタイプは、差込便器が肌に当たった際に冷たく感じるのを防ぐことができます。
要介護者の好みに合わせて選びましょう。

 

排泄介助の手順

ベッド上で便器を使った排泄介助の手順は以下の通りです。

腰を上げることができる要介護者の場合

  1. 要介護者に声をかけ、バスタオルで腹部から太ももくらいまでを覆い、ズボンと下着を脱がせる
  2. 便器の中にトイレットペーパーを入れる
  3. 便器をおしりの下に入れることを要介護者に伝え、腰を上げてもらい便器を差し込む。その際、肛門が便器の中央にくるようにする。女性の場合は尿が飛び散るのを防ぐため陰部にトイレットペーパーを当てる
  4. バスタオルをかけて陰部を隠し、体勢が安定していることを確認する
  5. 便器の準備ができたことと排便が終わったら声をかけるよう要介護者に伝え、介助者は席を外す
  6. 排便が終わったら、バスタオルをあげておしりふきで肛門などに付着した排泄物を拭き取る。陰部洗浄する場合は、陰部洗浄ボトルで陰部にお湯をかけ、おしり洗いを使って陰部を洗う
  7. 皮膚に水分が残っている場合には、トイレットペーパーを使って水分を拭き取る
  8. 要介護者に声をかけ、腰を上げてもらい便器を外し、ふたをする
  9. もう一度要介護者に声をかけて腰を上げてもらい、ズボンや下着をあげる

腰を上げることが難しい要介護者の場合は、上記3の便器をおしりに当てる方法が異なります。

 

腰を上げることが難しい要介護者への便器の当て方

  1. ズボンと下着を脱いだ状態で要介護者の身体を介助者の側を向くように横向きにする
  2. おしりの割れ目のあたりにある骨(尾骨)が便器の中央にくるように便器を当てる
  3. 便器をおしりに当てたまま、ゆっくりと要介護者の身体を仰向けに戻す

便器を当てたあとの手順は、上記4〜9と同じです。

便器にトイレットペーパーを入れておくと、片付けをスムーズに行うことができます。
また、排尿時の音や飛び散り防止にもつながります。

 

排泄介助の注意点

ベッド上で便器を使った排泄介助を行う際の注意点は以下の通りです。

 

●環境や恥ずかしさへの配慮

ベッド上で排泄する恥ずかしさや抵抗感などから排便しようとしても出ないことがあります。
排便時はなるべく要介護者を1人にすることが大切です。

ベッド上で排泄をする際に、失敗してしまった体験は要介護者に精神的な負担を与えてしまいます。
排便時にシーツや寝具を汚さないようにするために、防水シーツを使うのも良い方法です。

● 排泄時の姿勢

ベッド上で排泄する場合、横になった姿勢でお腹に力が入りづらく、うまく排便できないことがあります。
お腹に力を入れやすくするために、可能であればベッドの頭側を30°ほど上げる 方法をとることが一般的です。

● 便器の保温

便器を冷たいまま当ててしまうと、要介護者は驚いてしまったり、不快感を感じてしまったりします。
特に冬場など寒い時期は、便器を温めてから使いましょう。

 

ベッド上での排泄は、トイレ介助のときよりも抵抗感を抱く要介護者が多いため、十分に配慮する必要があります。

 

ベッド上で尿器を使う排泄介助

 

ベッド上で尿器を使う排泄介助の必要物品、手順、注意点をご紹介します。

 

排泄介助の必要物品

ベッド上で尿器を使った排泄介助を行う際の必要物品は以下の通りです。

● 尿器
● おしりふき 、トイレットペーパー
● 使い捨ての手袋

排尿のみの場合も排泄後に陰部についた尿を拭くためのおしりふきやトイレットペーパーが 必要です。

 

尿器の選び方

尿器は男性用と女性用で形が異なるため、性別に合わせたものを使う必要があります。
尿器もプラスチック製のほうが軽量で扱いやすいため、在宅介護で使われることが多いです。

 

排泄介助の手順

尿器を使った排泄介助の手順は以下の通りです。

 

男性の場合

  1.  腰から太ももくらいまでバスタオルをかける。要介護者に声をかけて腰を上げてもらいズボンと下着を下ろす。自力で腰を上げられない場合は、要介護者の身体を介助者側に横向きにしてズボンと下着を下ろし仰向けに戻ってもらう
  2. 尿器をセットして 排尿するよう要介護者に声をかける
  3.  排尿が終わったら、尿器を外し、尿がかかった部位を おしりふきで拭き取る
  4.  要介護者に声をかけ、ズボンと下着をあげてバスタオルを外す
  5. 尿器を片付ける

 

女性の場合

  1. 腰から太ももくらいまでバスタオルをかける。要介護者に声をかけて腰を上げてもらいズボンと下着を下ろす。自力で腰を上げられない場合は、要介護者の身体を介助者側に横向きにしてズボンと下着を下ろし仰向けに戻ってもらう
  2. 尿器受け口の先端を陰部 に密着するように当てた状態で、 排尿するよう要介護者に声をかける
  3. 排尿が終わったら、尿器を外し、おしりふきで陰部を 拭く
  4.  要介護者に声をかけ、ズボンと下着をあげてバスタオルを外す
  5.  尿器を片付ける

 

尿器は男性用と女性用があります。
女性は排尿時に尿器がずれてしまうと、尿が漏れやすいため注意が必要です。
女性の場合、排尿中は 介助者が尿器を手で固定する必要があります。

 

排泄介助の注意点

尿器を使った排泄介助の注意点は以下の通りです。

● 尿が漏れないように配慮する
尿器を使った排泄介助を行う場合、尿が漏れてしまうと要介護者は余計に恥ずかしさを感じたり、不快感が強くなったりしてしまいます。

● 失禁を防ぐためにも速やかに尿器を当てられるようにする
尿意を感じてから排尿までの時間は人によって異なります。
速やかに尿器を当てられるようにすることが大切です。

 

しかし、排尿の訴えがあったときに介助者が必要以上に慌てたり、不用意な発言をしてしまったりすると、要介護者の心を傷つけてしまいます。
傷ついた要介護者は、排泄を我慢したり、水分や食事を摂らなくなってしまったりすることもあります。

速さも大切ですが、要介護者の気持ちへの配慮はさらに大切です。

 

寝たきりでおむつ交換を行う排泄介助

 

寝たきりでおむつ交換を行う際の排泄介助について、必要物品、手順、注意点をご紹介します。

 

排泄介助の必要物品

排泄介助でおむつ交換を行う場合に必要な物品は以下の通りです。
● 新しいおむつ
● 尿とりパッド
● 使い捨ての手袋
● おしりふき

 

陰部洗浄も行う場合は以下の物品も準備します。
● 陰部洗浄用のボトル(お湯が入ったもの)
● おしり洗い
● トイレットペーパー
● 保湿剤

 

おむつを使用する場合は、下着の場合よりも蒸れやすくなるため、おしりの皮膚を観察し、こまめにケアをすることが大切です。

 

排泄介助の手順

寝たきりでおむつ交換を行う排泄介助の手順は以下の通りです。

  1. 腰から太ももくらいまでバスタオルをかける。要介護者に声をかけ腰を上げてもらいズボンと下着を下ろす。自力で腰を上げられない場合は、要介護者の身体を介助者側に横向きにしてズボンと下着を下ろし仰向けに戻ってもらう
  2. おむつを開き、おむつの中を確認する
  3. 排泄していた 場合は、 大きな汚れを先にトイレットペーパーやおしりふきで取って、おむつの端に置いておく
  4. おしりふきで陰部を尿道口から肛門に向かって拭き取る
  5. 要介護者の身体を介助者側に向くように横向きにし、おしりふきでおしり全体を拭く。このとき、おしりの皮膚を観察しながら拭き、肛門部分など排泄物がついている部位は最後に拭く
  6. 皮膚に水分が残っている場合には、乾いたおしりふきで水分を拭き取る
  7. おしりに保湿剤を塗る
  8. 尿とりパッドのみ交換する場合は汚れた尿とりパッドを取り除き、新しい尿とりパッドを当てる。おむつ自体を交換する場合は、汚れたおむつを丸めて取り除き、新しいおむつの端を要介護者の腰の下に入れ込む。おむつを取り除くのが難しい場合は、排泄物が皮膚に触れないように汚れたおむつを丸めて要介護者の腰からおしりのあたりに沿わせ、要介護者の身体を仰向けにする
  9. 介助者はベッドの反対側に移動し、要介護者の身体を先ほどとは反対側に向くように横向きにする。先ほど丸めた汚れたおむつを取り除き、新しいおむつを引き出し広げる
  10. 要介護者の身体を仰向けにして、おむつを当ててテープで留める
  11. 1.と逆の手順でズボンや下着を履いてもらう

陰部洗浄を行う場合は、上記手順の3.~4.のタイミングで行いましょう。

 

排泄介助の注意点

寝たきりでおむつ交換を行う排泄介助の注意点は以下の通りです。

● 要介護者に合ったおむつを選ぶ
おむつはテープ式のおむつと、パンツ式のおむつがあります。
寝たきりで自力で腰を上げることが難しい要介護者の場合は、テープ式のおむつと尿とりパッドを使うと排泄介助がやりやすくなります。

● 蒸れやすいため皮膚のケアに気をつける
おむつは下着に比べて蒸れやすいです。
排泄介助を行う際に、おしりの皮膚を観察し、皮膚への刺激が少ないおしりふきを使ったり、保湿剤を使ったりして皮膚トラブルを防ぐことが大切です。

 

おしりふきで拭き取ったあとや陰部洗浄後に、水分が皮膚に残っていると余計に蒸れやすくなります。
乾いたものでしっかりと水分を拭き取ってから新しいおむつをつけましょう。

 

在宅介護で排泄介助を適切に行い快適な毎日を

 

在宅介護で排泄介助を適切に行うことができると、要介護者の生活の質が高まります。
排泄介助をされる要介護者の気持ちに寄り添い、なるべく恥ずかしさや抵抗感を少なくできるような工夫をすることが大切です。

 

排泄介助の手順・注意点を理解して、要介護者に合った適切な排泄介助を行うことで快適な毎日を送りましょう。