高齢者の寝たきり介護の基本と実践ケアのコツ
公開日:2025/06/16
「寝たきりの家族介護で身体の負担が大きくしんどい」「寝たきりの家族をうまく介護するケアのコツを知りたい」
このように悩んだり不安に感じたりしているご家族はいませんか。
高齢化が進む現代において、寝たきりの高齢者を在宅で介護しているご家庭は少なくありません。家族だけでの介護は、心のゆとりを失いやすく、体力的にも大きな負担になりがちです。
この記事では、在宅介護の基本的なケアの方法に加えて、介護保険サービスの活用法や、日常生活を支える便利な介護グッズなどを紹介します。ご家族の心と身体を守るためのセルフケアにも触れるため、穏やかな日々を築くための一歩としてお役立てください。
寝たきり高齢者の現状と課題
厚生労働省「介護保険事業状況報告(令和7年2月分)」によると、居宅(介護予防)サービスの受給者は要介護4で44万701人、要介護度5で26万4,117人と報告されています。
高齢化が進む現代において、寝たきりの高齢者は増加傾向といえます。
寝たきりの高齢者は自分の意志で身体を動かすことが困難です。そのため、ご家族が24時間体制でおむつを交換したり、高齢者の希望に沿ってケアしたりしなければならず、ご家族は心身の疲れから体調を崩したりする場合も少なくありません。
ほかにも、介護のために仕事を辞めざるを得なくなり、経済的な影響を受けることもあります。
ご家族が疲弊すると、高齢者の生活にも影響が出てしまいます。
介護の問題は一人で抱え込むべきものではありません。住み慣れた在宅で過ごしてもらいたいという気持ちは大切ですが、無理せずに外部のサービスを活用することも一手です。
日常のケアはご家族でできる範囲でおこなう一方で、専門的な知識やスキルが必要な部分は介護保険サービスや訪問介護などを利用して負担を分散しましょう。
早めに適切なサポートを取り入れご家族の負担を軽減できれば、より良い環境で過ごすことができますす。ご家族の身体や心の健康も守りながら、安心して在宅介護が長く続けられるような体制づくりが重要です。
寝たきり高齢者の介護の仕方|基本のケアの実践法
寝たきりの高齢者を在宅で介護する際には、体調管理や日々のケア、衛生面のサポートなど、多岐にわたる対応が必要です。
ここでは、日常的なケアの中でも特に重要なポイントについて、実践的な方法と注意点をわかりやすく解説します。
日常的な体調チェック
毎日の体調管理は、寝たきりの高齢者の健康状態を把握するうえで欠かせません。たとえば起床時や就寝時など決まった時間におこなうと良いでしょう。
体調の変化を見逃さず、早めに対処するために表情や顔色など普段と異なっているところはないか確認したり、バイタルサインを測定し基準値と照らし合わせたりすることが大切です。
- 体温測定(正常値:36~37℃)
- 血圧測定(正常値:135/85mmhg未満)
- 脈拍測定(正常値:60~70回/分)
ただし、正常値は一般的なものであるため、毎日の数値と大きく変動がないかの確認が不可欠です。ご家族が高齢者の体調に異変を感じた場合は、体調の悪化を防ぐためにも早めに医療機関に相談しましょう。
ベッド上での体位変換
体位変換は、床ずれの予防にとって重要ケアです。
同じ姿勢が続くと、背中や腰、かかとなどに長時間強い圧力がかかり、血流が悪くなった結果、床ずれが発生するリスクが高まるからです。
高齢者がベッドで長く過ごす場合は、2時間を超えないことを目安に定期的な体位変換をおこなってください。以下は、仰向けの姿勢からご家族側に横向きへ変える基本的な方法です。
- 胸の上で高齢者の手を組ませる
- 頭の枕を手前にずらす
- 踵がおしりにつくように膝を曲げたうえで支える
- 片方の手で高齢者の肩を、反対の手で腰を支える
- 腰から肩の順で向きを変える
- 高齢者の身体になるべく隙間ができないように、クッションで体制を整える
身体を横向きにした後は、クッションを活用して骨が出ている部位への圧力を分散させてください。身体の傾きや姿勢を整えると、高齢者にとって楽な状態となり、眠りの質が高まり精神的な安定にもつながります。 一人で体位を変えるのが難しい場合は、スライディングシートや体位変換の補助具を使うと、ご家族の身体的な負担も減るでしょう。
車椅子やトイレへの移乗
寝たきりの高齢者も、ご本人の体調やご家族の介護状況によっては、車椅子に移ったりトイレへ移動したりする機会があります。安全に移乗をおこなうためには、ご家族の身体をうまく使い、注意点を理解したうえで進めましょう。
移乗の際は、高齢者が安心できるよう声かけを忘れず、ご家族の腰や膝に過度な負担がかからないように注意してください。安全でスムーズな移乗は、転倒やけがの防止にもつながります。
また、在宅介護をおこなう場合は、点滴や膀胱留置カテーテルなどのチューブ類を扱うケースもあるため、敷き込んだり、引っ張ったりしないようにしましょう。
⇩移乗介助の詳しい方法が知りたい方はこちらから⇩
食事介助
食事は、身体の健康を保つだけでなく、生活の楽しみでもあります。しかし、年齢を重ねたことや病気の症状によって飲み込む機能が低下すると、誤嚥や窒息のリスクが高まります。 安全に食事を進めるためには、しっかり起こした体勢にしたり、一口の量を調整したりなど、細やかな工夫が必要です。
また、食事を介助する際には、誤嚥やムセを防ぐための配慮だけでなく、栄養バランスにも注意が必要です。偏った食事は体力の低下や病気になるリスクを高めるため、必要に応じて医師や管理栄養士など専門職にアドバイスを求めましょう 。
安全で心地よい食事の時間を提供するためには、ご家族の観察力と柔軟な対応力が求められます。高齢者の表情や反応にも気を配りながら、安心して食事ができる環境づくりを心がけてください。
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口腔ケア
口腔ケアは、単に口の中を清潔にするだけでなく、全身の健康維持に欠かせません。
というのも、高齢者は、口腔内の細菌が気管に入り込み、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高まるからです。厚生労働省「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、主な死因の6番目に誤嚥性肺炎が挙がっています。
誤嚥性肺炎は命に関わる病気であるため、正しい口腔ケアが重要です。歯みがきの際には、歯や歯ぐきの状態をよく観察し、無理なく痛みや出血を防ぐ工夫が大切です。また、ポジショニングを整えると、誤嚥や窒息のリスクが減ります。
口腔ケアは毎日の積み重ねが大切です。介助時は高齢者の痛みや違和感に注意し、無理のない範囲でおこないましょう。特に歯ブラシの動かし方や力加減に気をつけ、出血や口内炎を悪化させないように心がける必要があります。
適切な口腔ケアは、誤嚥性肺炎の予防だけでなく、食事の楽しみを維持し、全身の健康にもつながる重要なケアです 。
⇩口腔ケアの詳しい方法が知りたい方はこちらから⇩
歯科医師 五島朋幸先生によるコラムでも詳しくご紹介しています。
排泄介助
排泄介助は、高齢者の尊厳を守りながら、清潔を保ち、感染症の予防に十分配慮しておこなうことが重要です。特に、ベッド上でのオムツ交換は、ご家族の腰の負担を減らしながら、感染予防の手順を守らなければなりません。
また、膀胱留置カテーテルを挿入している場合は、陰部の周囲が不潔のままであると、尿路感染症を起こすリスクが高いため、管理には注意が必要です。 排泄介助時に陰部を洗い、適切な温度の水と洗浄剤を使用することで清潔を保ちます。
⇩排泄介助について詳しい方法が知りたい方はこちらから⇩
寝たきりの高齢者の排泄介助に苦労しているご家族は多いのではないでしょうか。
ベッドでの排泄介助に「やぶれにくいタイプのおしりふき」を活用すると、丈夫でやぶれにくいので、手を汚さずにしっかりとふき取りが行えて衛生的です。
肌にやさしい成分が含まれており、敏感な肌の高齢者にも適しています。在宅介護における排泄介助の負担を軽減できるでしょう。
清潔保持と着替えの介助
身体の清潔を保つための清拭や着替えの介助は、高齢者の快適さと健康維持に欠かせません。爪切りの際の注意点も含めて解説します。
〇全身清拭の手順
- 物品を準備する(バスタオル、フェイスタオル3枚程度、陰部用タオル、着替え、お湯を入れたバケツ、オムツ用ゴミ袋、など)
- 頭・顔・首を拭く(耳、首の後ろは汚れが溜まりやすいため、あまり圧をかけすぎない程度に念入りに拭く)
- 上肢を拭く(タオルは広く皮膚に当て、筋肉の走行に沿って抹消から中枢に向かって拭く)
- 胸部を拭く(脇の下は汗を書きやすく汚れが溜まるため、念入りに拭く)
- 腹部を拭く(内臓があるため優しく、円を描くように拭く)
- 足を拭く(膝を立てて、関節を支えながら足を安定させる)
- 高齢者に横向きになってもらう(高齢者の膝を曲げ、ご家族から遠い方の肩と腰を持ち、身体をご家族の方に向くように横向きにする)
- 背部を拭く(背部は冷感を最も敏感に感じるため、寒くないようにスムーズにおこなう)
- 陰部を拭く(陰部から肛門に向かって一方向に拭く
入浴が難しい場合は便利な「泡でさっぱりからだふき」を活用してみてはいかがでしょうか。
泡タイプのからだふきで、お湯を使わずに、泡を肌にのせて拭き取るだけで清潔を保てます。
すすぎや拭き直しが不要で、時間や手間を省けるため、ご家族の負担軽減にもつながることがメリットです。
また、肌にやさしい弱酸性で、保湿成分配合されているため、高齢者の肌を守ってくれるアイテムとして重宝できます。
〇着替えの手順
- ご家族の手前側の袖から脱いでもらう
- 高齢者の手を袖口から持ち、清潔な寝衣を通す
- 高齢者を横向きにし、脱いだ寝衣と清潔な寝衣を一緒に下方に押し込む
- 反対側を向かせ、もう一方の袖を脱ぎ、清潔の寝衣の袖に手を通す
注意点として、片方に麻痺がある高齢者が着替えをする場合は、麻痺のない腕から脱ぎ、麻痺のある腕から着る方法が基本となります。
〇爪切りのケア
- 爪を観察する(色や形が変わっていないか、伸びすぎていないか、割れ、はがれ、肥厚、巻き爪の有無などを確認する)
- 足、もしくは手をお湯に入れ、柔らかくする
- 爪の先端の白い部分が1ミリほど残る程度に、まっすぐ切る(一度に切らず、何回かに分けて切る方法を意識し、厚くて硬い爪はやすりで削ってから切る)
このように、身体を清潔に保ち、快適に過ごしてもらうための介助を心がけてください。
〇シーツ交換
シーツ交換は高齢者の快適さと清潔保持のために重要です。身体に負担をかけず、衛生的におこなう手順を解説します。
- 高齢者を横向きにする
- シーツ半分を取り込み高齢者の背中に入れ込む
- 新しいシーツを半分敷く
- 高齢者を反対向きにする
- 反対側の汚れている方のシーツを取り除く
- 残り半分の新しいシーツを敷く
身体の動きを配慮しながらスムーズにおこないましょう。
また、尿や便が漏れてしまい、シーツが汚れてしまうことに悩んでいる方もいるでしょう。
排泄ケアや失禁対策として、多くのご家庭で活用されているのが防水シーツです。
「ハビナース 耐熱防水シーツ」はやわらかなパイル地で肌触りがよく、裏面には防水性に優れたポリウレタンラミネート加工が施されており、寝具をしっかり保護してくれます。繰り返しの使用にも適しており、制菌加工も施されているので感染症が気になる季節にも安心です。
在宅でできるリハビリテーション
寝たきりや長時間の同じ姿勢が続くと、関節が固まりやすくなります。一度、固まってしまうと、元の状態に戻すことは難しく、物を掴めなかったり、うまく立てなかったりなど、関節が固まった部位によって、さまざまな支障をきたします。
これらを予防するためには、日々のリハビリがとても重要です。ベッド上でもできる簡単な運動とマッサージの方法をご紹介します。無理のない範囲で継続し、必要に応じて医師や理学療法士など専門家のアドバイスを受けながら進めましょう。
<足首の関節を動かす>
- 踵を包むようにして足を持ち、足全体を押して筋肉を伸ばすようにストレッチする
- ふくらはぎの筋肉の伸びを意識し、3~5秒維持してゆっくりと元に戻す
- 1~2の動作を繰り返す
<足の指を動かす>
- 足の親指と人差し指を持って上下に動かす
- 1の動作を人差し指と中指、中指と薬指、薬指と小指といった順番で全ての指でおこなう
- 各運動を5~10回1セットを1日に2~3セットおこなう
これらのリハビリは、血行を促進し、むくみや痛みの予防にもつながります。毎日のケアに取り入れ、健康的な身体の維持を目指しましょう。
在宅介護における季節ごとの注意点

高齢者の身体は季節の影響を受けやすく、特に夏の熱中症と冬の感染症などには注意が必要です。ここでは、在宅介護で押さえておきたい季節ごとのポイントを解説します。
夏の時期
夏の在宅介護では、熱中症や脱水を防ぐための対策が欠かせません。
というのも、高齢者は喉の渇きを感じにくく、体内の水分が不足しても自覚しにくい傾向があるからです。こまめな水分補給を心がけ、1日に何回かに分けて少量ずつでも飲んでもらうようにしましょう。
脱水のサインには、尿の量が減る、口の中が乾く、皮膚の張りがなくなるといった症状が挙げられます。
また、室温は28度前後を目安に調整し、扇風機や冷房を上手に活用する工夫が大切です。
しかし、高齢者の中には電気代がかかる、エアコンをつけっぱなしにしたらもったいないという理由で熱帯夜でもエアコンや扇風機を使わない方もいます。ほかにも、エアコンが冷えすぎて体に悪そうと考える意見も少なくありません。その結果、脱水症状を起こしたり、命に関わる熱中症になったりするリスクが高まります。
冷房が苦手な高齢者の場合は、保冷グッズや通気性のよい寝具の使用も効果的です。暑さに応じた柔軟な対応で、高齢者の体調を守りましょう。
冬の時期
冬は感染症や低体温、ヒートショックなどのリスクが高まります。
インフルエンザや風邪、ノロウイルスなどの感染症対策として、手洗いをすることが基本です。ご家族は介護をおこなう前後には、必ず石けんと流水で丁寧に洗い、清潔を保つようにしましょう。
また、室内は20度前後を目安に暖かく保ち、乾燥しすぎないよう湿度も50〜60%に保つのが理想です。暖房を使用する際はこまめに換気をおこない、空気を入れ替えましょう。
寒さから身を守るだけでなく、生活環境を整え、体調の安定と感染症予防につなげていくことが大切です。
在宅介護の負担を軽減するための方法
在宅での介護は、身体的・精神的に大きな負担がかかりやすいものです。
介護する側・される側のどちらにとっても無理のない生活を実現するには、介護サービスや介護グッズをうまく取り入れることが不可欠です。
ここでは、介護保険サービスの活用方法や申請の流れ、利用できる主なサービスについて紹介します。
介護保険サービスの活用
介護保険サービスは、要介護状態にある高齢者とそのご家族を支える大切な社会保障制度です。
特に、寝たきりの高齢者に対しては、身体的なケアや生活支援だけでなく、ご家族の負担を和らげる役割も果たします。
訪問介護やデイサービスなどのサポートを取り入れ、在宅での介護を続ける環境が整うと、ご家族の心身の負担軽減にもつながります。適切に活用すれば、在宅介護の質の向上が期待できるでしょう。
介護保険サービスの利用申請の流れ
介護保険サービスを受けるには、まず市区町村の窓口で申請手続きが必要です。
申請はご本人またはご家族ができ、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談しながら進めるとスムーズでしょう。
申請後、要介護認定の調査(認定調査)と医師の意見書をもとに、要介護度が決定します。
認定結果に応じて、ケアマネジャーがケアプラン(介護サービス計画)を作成し、必要なサービスを組み合わせて提供する流れです。
この過程を経て、介護保険サービスの利用が可能になります。申請から利用開始までには一定の期間がかかるため、早めの相談と準備がポイントです。

利用できる介護サービスの種類

介護保険サービスは、ご在宅や施設で介護を受ける方々を支えるために多様なサービスが用意されています。主に訪問系サービス、通所系サービス、施設サービスの3つに分類され、それぞれ利用者の状況やニーズに応じて選択が可能です。
訪問系サービス

【訪問介護(ホームヘルプ)】
介護職員が在宅に訪問し、日常生活の支援や身体介護をおこないます。
【訪問入浴介護】
専用の入浴車両で在宅を訪問し、浴槽を使って安全に入浴できるようサポートします。お湯に浸かれることで、清潔保持とリラックス効果が得られるはずです。
【訪問看護】
看護師が定期的に在宅を訪問し、医療的ケアや健康管理、療養生活の相談に応じます。医師の指示のもと、点滴や傷の手当てなど専門的なケアも提供されます。
【訪問リハビリテーション】
理学療法士や作業療法士が在宅を訪問し、身体機能の維持・回復を目的としたリハビリを実施します。日常生活動作の自立支援に役立つ、重要なケアの一つです。
通所系サービス

【デイサービス(通所介護)】
日中に施設に通い、食事や入浴、レクリエーションを楽しみながら介護や機能訓練を受けるサービスです。ご家族の休息にもつながり、社会的な交流の場としても重要となります。
【デイケア(通所リハビリテーション)】
理学療法や作業療法を中心にリハビリを目的とした通所サービスで、医療的な管理のもと専門的な機能回復訓練が受けられます。
【ショートステイ】
短期間施設に泊まりながら介護を受けるサービスです。ご家族の急用や休息時に利用され、安心して預けられる環境が整っています。
施設サービス

【介護老人保健施設】
病院とご家庭の中間的な役割を果たし、医療・リハビリを中心に日常生活の支援もおこなう施設です。在宅復帰を目指す方に適しています。
【特別養護老人ホーム】
常時介護が必要な方が入所できる施設です。生活全般の支援を24時間体制で受けられますが、入所待ちが多い傾向にあります。
【介護療養型医療施設】
長期療養が必要な高齢者向けの医療ケア施設で、医療と介護が一体となった支援が魅力です。
介護保険サービスにはここで紹介したもの以外にも、地域密着型サービスや福祉用具の貸与・住宅改修など、さまざまな支援が用意されています。
本記事では在宅介護の現場で特に利用頻度が高く、多くの方にとって関係の深い「訪問」「通所」「施設」の3つのカテゴリに絞ってご紹介しました。
介護の負担軽減や生活の質向上に役立つサービスを上手に活用し、無理なく在宅介護を支えていきましょう。
「在宅介護は無理だ」と感じる前に!介護者が知っておくべきセルフケア法

在宅介護は愛する高齢者を支える大切な役割ですが、その負担は想像以上に大きく、ときには「もう無理かもしれない」と感じるかもしれません。そんなときこそ、ご家族の心身の健康を守るセルフケアが欠かせません。
市区町村の相談窓口を活用
在宅介護は、身体的な疲労だけでなく、精神的なストレスも大きな負担となるものです。
ひとりで抱え込んでしまうと「もう無理だ」と感じる瞬間が増えがちです。そんなときこそ、地域の相談窓口を頼る勇気を持ってください。
各市区町村には、介護に関する相談を受けつけている「地域包括支援センター」や「高齢者支援窓口」が設けられており、専門職が状況に応じたアドバイスや支援の紹介をおこなっています。
また、近年ではインターネット上のオンライン相談窓口や、介護を担う者同士がつながれる掲示板・SNSグループなども充実しており、共感し合える仲間との交流を通して気持ちが楽になるケースもあります。
孤独を感じたときは、勇気を持って声をあげてみましょう。「誰かに聞いてもらえる」という事実が、心の支えになるでしょう。
ケアマネジャーに相談
在宅介護をおこなっているご家族の身近な相談相手がケアマネジャー(介護支援専門員)です。
ケアマネジャーは、介護保険サービスの利用をはじめとした介護に関するさまざまな調整を担っており「こんなときどう介護すれば良いの?」「今の状況に合った介護サービスを活用したい」などの不安や悩みを解決してくれる存在です。
介護疲れを感じている場合は、遠慮せずに現在の状況や不安を率直に伝えてみてください。
たとえば、ショートステイの利用をすすめてくれたり、負担の少ないサービスの組み合わせを提案してくれたりする場合もあります。
介護をおこなう人の生活や健康が守られてこそ、安定した介護は継続できます。ケアマネジャーはそのための心強いパートナーなのです。
最新の介護トレンドをリサーチ
介護の世界も、時代とともに少しずつ変化しています。新しい制度の導入や介護技術の進化、テクノロジーを活用した便利グッズの登場などの情報が日々更新されているのです。
具体的には、近年では介護ロボットや見守りセンサーの導入が進んでおり、介護の負担軽減に大きな効果をもたらしています。
また、政府や自治体のホームページでは、介護に関する最新情報や支援策を随時発信しており、無料のオンライン講座やパンフレットなども活用できます。
少しの工夫や知識のアップデートが、生活を楽にしてくれます。定期的に情報をチェックし「できることから取り入れる」姿勢が、負担を減らすカギです。
在宅介護のグループに参加
同じような状況にある人とつながると、在宅介護を担う人にとって大きな救いとなります。
地域には介護を担っているご家族の交流会や勉強会が開催されているほか、近年ではSNSやオンライン使ったサロンやグループなど参加のハードルが低いコミュニティも増えています。
こうしたグループでは「他の人も同じ悩みを抱えているんだ」「こんな工夫があるんだ」と新しい気づきが得られるかもしれません。孤立感が軽減され、精神的なゆとりが生まれる可能性があります。
負担を一人で抱え込まず「誰かと話す」「頼る」行動も在宅介護の大切なスキルのひとつです。支え合いながら、無理なく介護を続けていける環境づくりを意識してみてください。
日常でできるセルフケア法

介護は長期間にわたるため、ご家族の心身の健康維持が重要です。毎日の忙しさの中でも、セルフケアの時間を意識的に確保し、ストレスをためこまない工夫が必要です。ここでは、手軽にできるセルフケアの方法をいくつか紹介します。
呼吸法
ゆっくりと深い呼吸をおこなうと、自律神経のバランスが整い、心身がリラックスしやすくなります。
緊張や不安を感じたときには、意識して深呼吸をするだけでも気持ちが落ち着きます。リズムを決めておこなうと効果的です。
ヨガやストレッチ
軽めのストレッチやヨガは、筋肉のこわばりをほぐし、血行促進や疲労回復に役立ちます。
身体を動かす行動で気分転換にもなり、心も軽やかになります。無理のない範囲で、毎日少しずつ続けていきましょう。
アロマテラピー
ラベンダーやカモミールなどリラックス効果があるといわれているアロマオイルを活用してみましょう。
香りは脳の感情を司る部分に働きかけ、ストレスや緊張を和らげる効果があるとされています。寝る前に使うと、安眠を促す助けにもなるでしょう。
趣味の時間
介護以外の自分の好きなことに没頭する時間は、ストレス解消に効果的です。読書や音楽鑑賞、手芸、ガーデニングなど、心が安らぐ活動を意識的に取り入れてください。
十分な睡眠の確保
質のよい睡眠は、心身の疲れをしっかりと回復させるために不可欠です。
寝る前のスマホやパソコンの使用を控え、リラックスできる環境づくりを心がけましょう。
自分に合ったセルフケアの方法を見つけ、忙しい中でも意識的に取り入れていく努力が、長く介護を続けていくうえでの大切なポイントになります。小さな積み重ねが大きな支えとなります。
まとめ|無理をしない介護を目指して

寝たきりの高齢者の介護は、決して簡単なものではありません。日々の身体的な負担や精神的なストレスは、ご家族にとって大きな負担となります。
しかし、正しい知識と技術を身につけ、さらに介護保険サービスや介護用品を上手に活用すれば、その負担は軽減できる可能性があります。
また、周囲のサポートや専門家の力を積極的に活用したり、定期的にリフレッシュしたりして、精神的な余裕が生まれれば、介護の質も向上します。これにより、寝たきりの高齢者も、ご家族もより穏やかで充実した生活を送れるでしょう。
<参考サイト・文献>
厚生労働省/介護保険事業状況報告(令和7年2月分)
厚生労働省/3.健康状態の把握(PDF)
厚生労働省/(1)高血圧(PDF)
日本褥瘡学会/褥瘡の予防について
厚生労働省/令和5年(2023) 人口動態統計月報年計(概数)の概況
厚生労働省/公表されている介護サービスについて
厚生労働省/腹式呼吸をくりかえす こころもメンテしよう
大学卒業後、集中治療室や心臓血管病棟などで看護師として14年間勤務。主に、急性期の看護ケアに携わる。現在は、3人の子育てをしながら、医療や介護、看護に関わる記事の執筆や監修を行っている。
Contents
【看護師による在宅介護コラム】
▶vol.01 要介護認定から始める在宅介護の基礎知識~要介護認定の基準や申請方法・在宅介護について~
▶vol.02 【認知症介護】在宅介護のポイント!限界と感じやすい3つの理由も解説
▶vol.03 移乗介助―移乗介助の方法・ポイント・注意点などについて
▶vol.04 介護のおむつ交換の手順!9つの注意点や負担を軽減する方法を解説
▶vol.05 在宅介護でよくある5つの悩みとは?介護疲れの対処法と事例を紹介
▶vol.06 高齢者が眠れない原因とは?在宅介護でモーニングケアが大切な理由と基本手順
▶vol.07 要介護者に口腔ケアをする6つの目的!口腔ケアに必要な用品と手順も詳しく解説
▶vol.08 在宅で注意すべき高齢者の転倒とは?5つの原因と対策をご紹介
▶vol.09 高齢者の脱水症状を防ごう!脱水症状を起こす5つの原因と予防法
【介護コラム】
▶vol.01 初めての在宅介護 基礎知識~在宅介護を始める前に~
▶vol.02 介護と介助の違いとは?介助の種類や方法、失敗しないポイント
▶vol.03 介護用品の選び方|在宅介護に必要なものと選び方のポイント
▶ⅴol.04 入浴介助の手順と注意点、必要な介護用品、入浴介助の方法などについて
▶vol.05 車椅子の選び方・使い方、車椅子の介助方法などについて
▶vol.06 清拭(せいしき)の手順について|全身清拭・部分清拭の注意点とポイント
▶vol.07 在宅介護で看取りをするために必要なこと、準備や心のケアなどについて
▶vol.09 排泄介助(トイレ介助)の手順と注意点とポイントについて