在宅介護における高齢者のむくみ対策!症状別の原因とケア方法を解説
公開日:2025/09/29
高齢者の「むくみ」は日常的に見られる症状の一つです。初めは軽い腫れや違和感があるかもしれませんが、放置すると床ずれが発生したり、むくみによって身体の動かしにくさを自覚したりする可能性があります。
特に、高齢者は自覚症状が乏しいことも多いため、介護者が小さな変化を見逃さずに気づく姿勢が欠かせません。
むくみは一見「年齢のせい」と思われがちですが、心臓や腎臓、肝臓などの病気が潜んでいる場合もあります。
この記事では、部位や状況に応じた原因と、具体的なケア方法をわかりやすくご紹介します。むくみを放っておかず、原因ごとの適切なケアが健康を守る第一歩です。ぜひ参考にしてみてください。
在宅介護でよく見られる「むくみ」とは?
むくみとは、体内の余分な水分や老廃物が皮膚の下にたまる状態を指します。
医学的には「浮腫(ふしゅ)」と呼ばれ、足や手、顔などの一部に現れる「局所性」と、全身に広がる「全身性」にわけられます。むくみは加齢や病気、運動不足などによって血液やリンパの流れが悪くなると起こりやすい症状です。
高齢者はむくみが生じやすく、日常生活に支障が出る場合も少なくありません。その主な理由は以下の通りです。
- 筋力が弱くなり、血液やリンパを押し戻す力が落ちる
- 運動不足や同じ姿勢が続き、ふくらはぎのポンプ機能が働きにくくなる
- 心臓や腎臓、肝臓の働きが弱くなり、水分がうまく循環しなくなる
- 薬の副作用で体内の水分バランスが崩れる
むくみには「一時的に起こるもの」と「病気に関連して起こるもの」があり、軽く押すとへこむ一時的なむくみは、自然な改善が期待できます。しかし、押した後に長くへこんだり、へこむ範囲が広がったりするむくみには注意が必要です。
放置すると皮膚トラブルや日常生活の不便につながる可能性があるため、日々の観察と適切なケアが大切です。
在宅介護でのむくみが起こる主な原因

在宅介護の現場では、高齢者のむくみがよく見られます。むくみは、体内の水分や老廃物が皮下にたまるために起こりますが、その原因はさまざまです。ここでは、むくみがどのようにして起こるのか、特に注意したい主な原因を5つ紹介します。
長時間の同じ姿勢
高齢者は座ったままや寝たままの姿勢が長い傾向にあります。この状態が続くと、重力の影響で血液やリンパ液が足にたまりやすくなり、むくみが起こるのです。
特に、ベッドの上で同じ姿勢で過ごす時間が長かったり、車椅子での移動が中心であったりする高齢者は、足のむくみが起こりやすくなります。さらに、体を動かす機会が少ないと、血液やリンパの流れが滞りやすくなるため注意が必要です。
また、座った姿勢では膝の裏や太もも付近が圧迫されるため、血流が滞り、むくみがさらに強くなる場合もあります。日常生活を送るなかでの体位変換の不足も、むくみの原因につながることがあります。
筋力の低下
加齢により筋力が低下すると、ふくらはぎのポンプ機能が弱くなります。ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれ、足から心臓へ血液やリンパ液を押し戻す役割があります。
しかし、筋力が衰えると、血液やリンパの流れがスムーズに戻らず、足に水分がたまりやすくなるのです。歩行量が減ると、循環を助ける筋肉の働きが低下し、むくみの症状が長期間に渡って表れやすくなります。
運動不足や寝たきりの状態が続くと、この影響はさらに大きくなり、むくみの発生リスクが高まります。
高齢者は普段の生活でおこなう軽い運動だけでは、ふくらはぎの筋肉のポンプ機能が十分に働かず、血液やリンパの流れが滞りやすくなるため、むくみが起こりやすい状態なのです。
片麻痺
脳梗塞や脳出血などが原因で片麻痺があると、麻痺している側の手や腕にむくみが起こりやすくなります。というのも、麻痺によって筋肉を動かせず、血液やリンパの流れが滞るためです。
また、腕や手の位置が、常に下がったままの状態でいると、むくみの原因につながり、結果として手の甲や指が腫れ、握力が低下する可能性もあります。
しかしながら、これらの症状を本人が自覚しにくい点が問題です。麻痺がある部分を自分で動かすのが難しいため、自然に血液の循環が悪くなり、局所的なむくみが生じやすくなります。
内臓の機能低下
内臓の働きが低下すると、全身にむくみが広がりやすくなります。主に、心臓や腎臓、肝臓などの機能低下が関係している場合も少なくありません。以下に、それぞれの機能低下がなぜむくみにつながるのか、簡単に説明します。
- 心臓:ポンプ機能が弱まり血液の循環が滞ると、足などにむくみが生じやすくなる
- 腎臓:余分な水分や塩分を排出できず、体内に水分がたまりやすくなる
- 肝臓:血液中のたんぱく質が減少し、血管から水分が漏れやすくなる
これらの影響により、足や手だけでなく顔や体全体にもむくみが現れます。さらに内臓の状態によっては、むくみが慢性的に続き、改善に時間がかかる可能性があるため、注意が必要です。
薬の副作用
高齢者が服用する薬の中には、むくみを引き起こすものがあります。代表的なものに降圧薬やステロイドがあり、体内の水分や塩分のバランスに影響を与えるため、むくみが生じるのです。
薬によるむくみは、一時的なものの場合もありますが、症状が長引くと靴が履きにくくなる、動作が重くなるなど日常生活に支障が出る場合もあります。
複数の薬を併用している高齢者では、薬の影響を見極めにくい状況にあるため、気になる症状がある場合はかかりつけ医や薬剤師に相談することが大切です。
放置するとどうなる?在宅介護でのむくみによるリスクと注意点
むくみは一見すると「よくあること」「年齢のせい」と思われがちですが、在宅介護の現場では決して軽視できないサインの一つです。高齢者のむくみを放置すると、皮膚や体の機能に悪影響を及ぼし、日常生活や健康に深刻なリスクをもたらします。
以下に、注意したい主なリスクについて、表にまとめました。
リスク | 内容 |
皮膚トラブル | ・皮膚が薄くなる ・乾燥やバリア機能が低下する ・かぶれ、炎症が起こる ・床ずれにつながる危険性がある |
日常生活動作(ADL)の低下 | ・歩行や立ち上がりが困難になる ・握力や手先の動作に影響する ・食事や着替えなど自立動作に支障が出る ・介護度の進行や生活の質(QOL)の低下につながる |
実際に、足のむくみを放置して靴が合わなくなり、転倒リスクが高まったケースや、皮膚のむくみから始まった小さなかぶれが悪化して床ずれへ進行した事例も報告されています。
こうした変化は「ちょっとした不便」から始まるため見逃されがちですが、早期の観察とケアで予防できることもあります。
加えて、むくみを放置すると、重大な病気のサインを見逃す恐れがあります。むくみは単なる生活習慣や加齢の影響だけでなく、心臓病や腎臓病などの全身の病気が原因で起こる場合もあることを知っておきましょう。
さらに、片足だけのむくみや急な腫れ、強い痛みや熱感を伴う場合には、血栓症や感染症といった緊急性の高い病気の可能性もあります。こうしたケースでは、むくみを「一時的なもの」と考えて放置すると、重症化につながる危険があります。
このように、むくみは「ただの水分のたまり」ではなく、皮膚・体の動き・全身の健康に関わる重要なサインです。
在宅介護においては、むくみを予防・改善するケアを続ける姿勢が、高齢者の快適な生活と健康を守る第一歩となります。
在宅介護で注意すべき「むくみ」の症状別チェックポイント

在宅介護の場面で見られるむくみには、原因だけでなく症状の現れ方にも特徴があります。皮膚や体の変化を早期に発見できれば、重症化を防げるかもしれません。
ここでは、特に注意して観察したいむくみの症状をチェックポイントとして紹介します。
足のむくみ
在宅介護の場面でもっともよく見られるのが「足のむくみ」です。
長時間、座った姿勢や寝た姿勢が続くと、重力の影響で水分が下半身にたまりやすくなり、足の甲やふくらはぎにむくみが出てきます。
指で押すとへこみが残るのが特徴で、日常的にチェックしやすいポイントです。ほかにも、靴下の跡がくっきり残る、靴が急にきつく感じるなどといった変化も、介護の中で早期に気づくサインになります。
毎回靴下を脱いだあとに「跡が残っていないか」を確認する習慣をつけると変化に気づきやすいです。
片足だけに強い腫れが出ているときは、血栓症という重大な病気が隠れているリスクもあります。むくみの左右差は重要な観察ポイントなので、必ず確認しておきましょう。
また、降圧薬の中でも「カルシウム拮抗薬」を使用していれば、副作用として足首やすねのむくみが出る場合があります。薬剤性のむくみは日常の工夫では改善しにくいため、見逃さずに把握する必要があります。
このように、足のむくみは単なる一時的な変化である場合もありますが、深刻な疾患のサインが隠れていることもあります。
手や腕のむくみ
手や腕のむくみは、足のむくみに比べると目立ちにくいですが、在宅介護の現場ではよく確認しておきたい症状です。実際に、片麻痺がある方では、筋肉のポンプ機能が低下しているため、麻痺側の手や腕に血液やリンパ液がたまりやすくなります。
姿勢の崩れや腕を下げたままの状態が長時間続く状況も原因での一つです。チェックポイントとしては、手の甲や指が腫れて「グー」が握りにくくなることが挙げられます。
指輪がきつくなる、介護者が手を握ったときに違和感があるなどもサインとなります。握手や手を優しく握るときの感触で「硬さ」や「腫れぼったさ」を確かめると観察がスムーズです。
また、むくみと同時に皮膚が硬くなり、さらに光沢を帯びてくるなら、慢性化や進行のサインであり注意が必要です。乳がん術後ではリンパ浮腫の可能性も考えられるため、これまでの病歴を踏まえた観察が求められます。
顔やまぶたのむくみ
顔やまぶたのむくみは、朝起きたときに目立ちやすいのが特徴です。腎臓の機能や栄養状態が影響している場合が多く、ネフローゼ症候群や腎不全などの病気では顔にむくみが出やすい傾向があります。
また、甲状腺機能低下症やステロイド薬の副作用によっても顔のむくみが見られます。
観察のポイントは、まぶたの腫れぼったさや顔全体のふくらみです。皮膚にハリが出て表情が変わって見える場合もあり、単なる一時的なむくみとは区別する必要があります。
洗顔や歯磨きのときに鏡を見ながら、左右差や目の周りの腫れを毎日チェックすると気づきやすいです。
むくみが慢性的に続くときは、見た目の変化だけでなく、全身の内臓機能の低下が隠れている可能性もあります。
全身のむくみ
全身のむくみは、心臓や腎臓などの全身疾患が原因となるケースが多く、注意が必要です。
また、低たんぱく血症など栄養状態の悪化によって血管内の水分が外に漏れ出しやすくなることも、むくみの主な要因の一つです。
足や手だけでなく、体全体がふっくらと腫れたように見えたり、皮膚全体が張った感覚があったりするなら、全身のむくみが疑われます。進行すると動作が鈍くなり、着替えや移動の際に違和感を覚える場面も少なくありません。
着替えや入浴介助の際に「服のきつさ」や「皮膚の張り具合」を確認すると、早めに異変を発見できます。
さらに、むくみが続くと皮膚のトラブルや床ずれのリスクも高まるため、早めのケアが重要です。加えて、ステロイドやホルモン薬の副作用によって、むくみが生じるケースもあります。
このようなときは、服薬状況を確認しながら、日々の観察を丁寧におこなう必要があります。全身のむくみは、単なる水分のたまりではなく、体の異常を知らせるサインとして見逃さないことが、高齢者の健康を管理していくためには重要です。
症状別にみる「在宅介護でのむくみ」の対処法

在宅介護の場面では、高齢者のむくみはよく見られる症状です。むくみの原因や現れ方は人によって異なるため、それぞれの症状に合わせたケアが大切になります。
ここでは、「足」「手や腕」「顔やまぶた」「全身」といった部位ごとに、在宅介護で実践できる主な対処法を紹介します。
足のむくみの対処法
足のむくみでまず基本となる対処法は「足を心臓より高い位置に上げること」です。
長時間座ったり寝たりする姿勢が続くとむくみが悪化するため、日常的に次のような工夫を取り入れると良いでしょう。
- ベッド上では膝の下にクッションを置く
- 体位を1~2時間ごとに変える
- かかと上げや足首の運動を取り入れる
- ふくらはぎや足首を優しくマッサージして循環を促進する
- かかりつけ医の指導のもと、弾性ストッキングや着圧ソックスを使用する
- 水分と塩分のバランスを整えた食生活を心がける
また、薬の副作用によってむくみが生じる場合もあります。気になる症状がある場合は自己判断せず、必ずかかりつけ医に相談しましょう。
その際には、服薬状況を記録し、あわせて症状の変化を具体的に伝えると、診断や治療の大切な手がかりとなります。足のむくみが改善されると、歩行や立ち上がりがスムーズになり、日常生活の自立度向上にもつながります。
⇩おすすめの商品はこちら⇩
ビーズパッド6型 抱き枕用
その他のビーズパッドはこちらからチェック
手や腕のむくみの対処法
手や腕のむくみは、片麻痺のある高齢者や長時間腕を下げたまま過ごす高齢者に多く見られます。対処の基本は「腕を心臓より高く保つこと」です。
ベッド上では肘の下にクッションや畳んだタオルを置き、車椅子上ではアームレストやテーブルにクッションを置いて支えましょう。
片麻痺のある場合は、リハビリスタッフの指導のもとで麻痺側の腕を意識的に動かすと効果的です。また、手先から肩に向けてリンパの流れを意識したマッサージを、圧をかけすぎずにおこなうと良いでしょう。
日常生活では洗顔や着替えなど、自然に手を使う動作を増やすと、血流改善につながります。衣類や装具、腕時計などの締めつけもむくみを悪化させるため注意が必要です。
継続的なケアにより、手の可動域の維持や日常動作の負担軽減にも役立ち、介護の負担も和らぎます。
顔やまぶたのむくみの対処法
顔やまぶたのむくみは、朝起きたときに目立つケースが多く、腎臓や栄養状態の影響が関係している場合もあります。まずは、起床後に顔を冷やし血流を引き締め、むくみを軽減してみてください。
軽い洗顔で皮膚を刺激するのも効果的です。マッサージをおこなう際は、目元や頬を内側から外側へ、上から下へと優しく流すようにし、リンパの通り道を意識するとスムーズに水分が移動します。
また、就寝時に枕の高さを少し調整し、頭を心臓よりやや高く保つと、翌朝のむくみを予防できる可能性があります。むくみが続く場合は腎機能や内分泌系の病気が隠れているリスクもあるため、早めにかかりつけ医へ相談しましょう。
冷やす・マッサージ・枕の工夫を組み合わせると、顔の表情が明るくなり、見た目の印象や気分の安定にもつながります。
⇩おすすめの商品はこちら⇩
ビーズパッド2型 頭用
全身のむくみの対処法
全身にむくみが出るときは、心臓・腎臓・肝臓などの内臓疾患や、低たんぱく血症といった栄養状態が原因である場合が多く見られます。
まず、バランスの取れた食事を心がけ、たんぱく質や塩分の適度な摂取が重要です。むくみ防止のために、水分を一律に制限するのではなく、一日に必要な水分量を少しずつこまめに補給し、排尿のタイミングを意識して体内の余分な水分をためないようにしましょう。
一日に必要な水分量は人それぞれ異なるため、まずはかかりつけ医と相談して目標量を決めることが大切です。あわせて、きちんと排尿が確保できているか確認する必要があります。
排尿回数や一回あたりの量を大まかにチェックできれば、普段より少ないなどの変化に気づきやすくなり、水分摂取の目安にもなります。
就寝前の大量の水分摂取は避け、日中にわけて飲むと良いでしょう。また、寝たきりや体力の低下がある場合でも、手足を動かす介助や体位変換を定期的におこなうと、血流やリンパの循環を促せます。
入浴や足浴、手浴などの部分浴も血行促進に役立ちます。さらに、内臓疾患や薬の影響によるむくみの可能性もあるため、自己判断せずかかりつけ医の診断を受けると安心です。
こうした対処を組み合わせ、むくみの進行を防ぎ、皮膚トラブルや床ずれなどのリスクを減らしていきましょう。
在宅介護でむくみを予防するための日常ケア

在宅介護では、高齢者のむくみを日常的に予防する必要があります。むくみは、血液やリンパの流れが滞ったり、体内の水分バランスが崩れたりすると起こる症状です。
日々のちょっとした工夫やケアで、むくみの発生を抑え、皮膚トラブルや床ずれなどのリスクも減らせます。ここでは、在宅介護で取り入れやすい、むくみ予防の具体的な日常ケアの方法を紹介します。
毎日のむくみを観察する
むくみは日によって状態が変わるため、毎日の観察が大切です。特に、朝と夕方ではむくみの出方に違いが出やすく、時間帯ごとの変化を確認すると体調の把握につながります。チェックする部位としては、足首や手の甲、まぶたなどがわかりやすい部分です。
軽く押してへこみが残るかどうかも観察ポイントです。
また、左右差があるかどうかにも注目してください。片足だけがむくんでいる、片腕だけが腫れているといった場合は、血栓症や片麻痺などのサインかもしれません。
むくみだけでなく、だるさや息苦しさ、尿量の変化といった体全体の症状も合わせて見守りましょう。
さらに、毎日の体重を測り、急な増加がないかを記録すると、体内に水分がたまっていないかを早期に気づけます。皮膚の赤みや光沢、かゆみや乾燥などといった状態にも注意し、変化があれば記録してかかりつけ医に相談しましょう。
塩分・たんぱく質・水分バランスでむくみを防ぐ
食事はむくみ予防の大きなポイントです。厚生労働省「日本人の食事摂取基準」によると、目安としては男性で1日7.5g未満、女性は6.5g未満とされており、塩分摂取を控える必要があります。
高血圧や慢性腎臓病のある方は6g未満が推奨されているため、かかりつけ医に相談しながら、濃い味つけの料理や漬物・加工食品・インスタント食品などは控え、薄味を心がけましょう。
むくみ予防のために積極的に取り入れたい栄養素は以下の通りです。
栄養素 | 内容 |
カリウム | ・野菜や果物に多く含まれる(バナナ、ほうれん草、じゃがいもなど) ・塩分や水分を体外に排出する働きがある |
ビタミンE | ・アーモンド、ひまわり油、かぼちゃ、うなぎなどに多く含まれる ・血流を改善し、足や手のむくみの軽減やだるさの予防に役立つ |
たんぱく質 | ・肉、魚、豆類などに含まれる ・血管内の水分バランスを整える |
水分補給は「制限」するのではなく「適切な量をこまめにとる」が基本です。高齢者は喉の渇きを感じにくいため、少量ずつでもこまめに水分を摂るようにしましょう。
必要に応じて栄養士やかかりつけ医に相談し、個々に合った食事管理を取り入れると、むくみ予防につながります。
手足の運動・マッサージでむくみを防ぐ
体を動かすことは血流やリンパの流れを促し、むくみを防ぐ大切な習慣です。寝たままでもできる運動として、足首の上下運動やかかと上げ、足指のグーパー運動がおすすめです。
手先では手首を回したり、指を一本ずつ動かしたりすると、血行が促進されます。長時間同じ姿勢を続けず、1~2時間ごとに体位を変えると、血液や水分の偏りを防げます。また、深呼吸や胸式呼吸も全身の循環を助けるため、習慣にすると効果的です。
介護者がいる場合は、足をやさしく持ち上げて曲げ伸ばし運動をしてあげるのも良いでしょう。もし運動が難しくても、足浴や蒸しタオルで温めたり、軽くマッサージしたりすると血行が促されます。
強い力で押す必要はなく、心地良い程度の刺激で十分です。毎日のケアの中で少しずつ体を動かす工夫が、むくみの予防や改善に役立ちます。
皮膚の乾燥・刺激に伴うむくみの悪化を防ぐ
むくみがある部分の皮膚は引っ張られて薄くなり、乾燥しやすい状態にあります。そのため、皮膚のバリア機能が低下し、傷やかゆみ、炎症が起こりやすくなります。むくみの悪化を防ぐためには、日常的に保湿ケアが欠かせません。
入浴や清拭の後には、低刺激で高保湿の保湿剤をやさしく塗り広げましょう。このとき、皮膚をこすらずに手のひらでなじませるように塗るのがポイントです。さらに、むくみがある部分は圧迫に弱いため、締め付けすぎない衣類や装具を選んでください。
必要に応じて保護パッドを用いて摩擦を防ぐと、皮膚のダメージを減らせます。皮膚の状態を毎日観察し、赤みや光沢、かゆみや乾燥が見られたら早めに対応するようにしましょう。小さな変化を放置せずにケアを重ねると、むくみに伴う皮膚トラブルが予防でき、快適な生活を支えられます。
⇩おすすめの商品はこちら⇩
保湿全身ローション
在宅介護で、医療機関に相談すべき「むくみ」のサインとは

在宅介護の場面で見られるむくみは、多くは日常的なケアや工夫で和らげられます。しかし、中には重大な病気のサインとして現れている可能性もあり、見逃すと症状が悪化する恐れがあります。
むくみが長引いたり、急に強く出てきたりしたときは、早めに医療機関を受診しましょう。ここでは、受診の目安となる「危険なむくみのサイン」を具体的にご紹介します。
むくみが改善しない・悪化している
在宅介護で見られるむくみの多くは、足を少し高く上げたり、軽くマッサージをしたりすると一時的に改善します。
しかし、これらのケアをおこなっても改善が見られない場合や、むしろ徐々に範囲が広がり、腫れが強くなっているときには注意が必要です。
特に数日がたっても朝の時間帯にむくみが解消されないときは、慢性的な循環不全や臓器機能の低下が背景にある可能性が考えられます。また、片足だけに強く出るむくみは深部静脈血栓症の危険性を示す場合があり、早期の医療介入が欠かせません。
むくみによって歩行や着替え、排泄といった日常生活の動作に支障が出るほど悪化しているときも受診の目安です。さらに、新しい薬を使い始めてからむくみが強くなったケースでは副作用の可能性もあるため、自己判断せずかかりつけ医に相談してください。
このように、改善せずに悪化を続けるむくみは、重大な病気のサインであると覚えておきましょう。
むくみに加え体調の変化がある
単に手足や顔が腫れているだけのむくみでなく、全身の異常のサインが伴うときには注意が必要です。体調の変化が現れると、心臓や腎臓など重要な臓器に負担がかかっている可能性があるため、早めの観察と対応が大切です。
注意すべき症状の具体例は以下の通りです。
- 息切れ・疲れやすさ
- 食欲の低下
- 発熱
- 急激な体重増加
- 尿量の減少
- 全身へのむくみの広がり
- 胸の圧迫感
- 咳や呼吸困難
- 意識のぼんやり感
- 反応が鈍さ
これらの症状を軽視すると命に関わる恐れがあります。むくみだけでなく体調の変化が同時に現れたら、早急に医療機関へ相談し、適切な診断と治療を受けることが不可欠です。
むくみに加え皮膚に異常が見られる
むくんでいる部分の皮膚は非常にデリケートで、少しの刺激でも炎症や損傷が起こりやすい状況です。赤みや熱感・かゆみ・硬さ・光沢が出ているときは、皮膚のバリア機能が低下して血流が滞り、軽度の炎症が始まっているサインです。
さらに進行すると、皮膚が破れて体液がにじみ出たり、水ぶくれや床ずれが形成されたりする可能性があります。また、皮膚の色が青白く変わったり、内出血が見られたりする場合は、血流障害が悪化している可能性が高く、迅速な対応が必要です。
加えて、むくみとともに顔つきが急激に変わる、まぶたの腫れぼったさが強くなるときも、全身の循環や内臓の機能低下に関連していることがあります。
身体の一部に急な腫れ・強い痛み・熱感が出ているときには、感染症や血栓などの急性疾患が背景にある可能性もあります。
このように、むくみに皮膚の異常が伴う場面では単なる水分貯留にとどまらず、深刻な合併症や基礎疾患の進行が考えられるため、医療機関への早めの相談が不可欠です。
まとめ|在宅介護でのむくみ対策は「気づき」と「ケア」の積み重ねが大切

在宅介護におけるむくみは、日常の中でよく見られる症状ですが、放置すれば生活の質を下げるだけでなく、重大な病気のサインを見逃す可能性が高くなります。
特に高齢者では体の変化がゆるやかで気づきにくいため、介護者が普段から観察を心がけていきましょう。
毎日の小さな変化に気づき、早めにケアを積み重ねていくと、むくみの予防と健康維持に直結します。そして、セルフケアや介護者の工夫だけでは改善が難しい場合には、迷わず医療機関に相談してください。
大切なのはむくみを「特別なもの」と構えるのではなく、日常の一部として自然に観察・対応していく姿勢です。そうした積み重ねが、安心できる在宅生活を支え、高齢者の快適さや介護者・ご家族の安心感にもつながっていくのです。
小さな工夫と気づきの積み重ねが、健やかな毎日を守る力となります。
【参考文献】
日本地域薬局約学会誌,Vol.8,No,2,127-133(2020)./中村宏洋ら,カルシウム拮抗薬内服患者の浮腫発現状況と浮腫発現関連因子の検討 ―保険薬局における薬剤服用歴の分析―(PDF)
厚生労働省/日本人の食事摂取基準(2025年版)
大学卒業後、集中治療室や心臓血管病棟などで看護師として14年間勤務。主に、急性期の看護ケアに携わる。現在は、3人の子育てをしながら、医療や介護、看護に関わる記事の執筆や監修を行っている。
Contents
【看護師による在宅介護コラム】
▶vol.01 要介護認定から始める在宅介護の基礎知識~要介護認定の基準や申請方法・在宅介護について~
▶vol.02 【認知症介護】在宅介護のポイント!限界と感じやすい3つの理由も解説
▶vol.03 移乗介助―移乗介助の方法・ポイント・注意点などについて
▶vol.04 介護のおむつ交換の手順!9つの注意点や負担を軽減する方法を解説
▶vol.05 在宅介護でよくある5つの悩みとは?介護疲れの対処法と事例を紹介
▶vol.06 高齢者が眠れない原因とは?在宅介護でモーニングケアが大切な理由と基本手順
▶vol.07 要介護者に口腔ケアをする6つの目的!口腔ケアに必要な用品と手順も詳しく解説
▶vol.08 在宅で注意すべき高齢者の転倒とは?5つの原因と対策をご紹介
▶vol.09 高齢者の脱水症状を防ごう!脱水症状を起こす5つの原因と予防法
▶vol.11 【2025年版】在宅介護をする上での高齢者の防災対策|災害時に直面する課題と今すぐできる備え
▶vol.12 高齢者にスキンケアが必要な3つの理由!肌の特徴とトラブルを防ぐケア方法
▶vol.13 在宅介護における高齢者のむくみ対策!症状別の原因とケア方法を解説
【介護コラム】
▶vol.01 初めての在宅介護 基礎知識~在宅介護を始める前に~
▶vol.02 介護と介助の違いとは?介助の種類や方法、失敗しないポイント
▶vol.03 介護用品の選び方|在宅介護に必要なものと選び方のポイント
▶ⅴol.04 入浴介助の手順と注意点、必要な介護用品、入浴介助の方法などについて
▶vol.05 車椅子の選び方・使い方、車椅子の介助方法などについて
▶vol.06 清拭(せいしき)の手順について|全身清拭・部分清拭の注意点とポイント
▶vol.07 在宅介護で看取りをするために必要なこと、準備や心のケアなどについて
▶vol.09 排泄介助(トイレ介助)の手順と注意点とポイントについて
▽商品をお求めの方はこちらから(Amazonブランドストア)▽
